2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730184
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石川 竜一郎 筑波大学, システム情報系, 講師 (80345454)
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Keywords | 国際研究者交流・フランス |
Research Abstract |
当該年度では、研究計画の第二段階にあたる「帰納的アプローチの不確実性下意思決定問題への応用」に取り組んだ。このためにシミュレーションと被験者実験による分析を行った。 シミュレーション分析においては、帰納的ゲーム理論で想定しているように、主体がある状況に関する知識を持たない状況から、主体の記憶能力に応じてどのように知識の蓄積が変化するか、また認識能力と情報収集時間の制限が、主体の知識の蓄積にどのように影響するかを検証した。こうした検証による、限定された能力や時間およびその制約を通じて得られる経験が、どのような状況認識を生むかを検証した。そこでの成果として、慣習や伝統で表現されるような標準的行動パターンが果たす役割を明確にした。 被験者実験では、資産市場を想定して行われた。特にその実験では、被験者の合理性および他者の合理性に関する被験者の認識が、資産取引にどのように影響するかを分析した。結論として、被験者の合理性はかなり限定されており、他者の合理性の程度を明確に区別することなしに、資産取引を行っていることがわかった。むしろ被験者が取引において重要視することは過去の経験であり,そうした経験に基づいた取引パターンを形成することを示すことができた。これは、帰納的ゲーム理論から得られる帰結と同様の結果である。 こうした結果は、帰納的ゲーム理論を様々な経済環境に応用できる可能性を示唆し、被験者実験の結果を描写できる行動モデルとなりうることを含意している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,本プロジェクトに関わる理論の検証を,実験およびシミュレーションを通じて行うことができた。次年度の研究総括のための理論的基礎およびデータを得ることができた。次年度はこれらを用いて,本プロジェクトの総括を行う準備が可能になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては,帰納的ゲーム理論における将来・不確実性に対する期待形成の理論的枠組みおよび実験の検証を行う。過年度の研究により,主体の経験を基礎とした状況認識の理論的基礎付けおよび実験・シミュレーションによる検証を行うことができた。こうした状況認識が,将来や不確実性に対する期待形成にどのように影響与えるかを分析していく。 また,こうした帰納的推論に基づく意思決定を,経済学の具体的な現象に応用したい。特に,これまで資産価格バブルの理論・実験研究を行ってきたので,このような状況に本プロジェクトの成果を応用する。これにより,多種多様な期待形成を行う主体の行動とその帰結としてのバブルやその崩壊について分析していく所存である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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