2012 Fiscal Year Research-status Report
マッチングマーケットデザインの新展開:非2部マッチングの研究
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23730188
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高宮 浩司 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40333588)
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Keywords | マーケットデザイン / メカニズムデザイン / 社会選択 / マッチング / 提携形成 |
Research Abstract |
マッチング理論のマーケットデザインへの応用は多大な成功を収めてきたが、既存のそれはほとんど2部マッチングに基づくものに限られる。(なお、2部の片側のみに選好を持つものを1部マッチングと称する場合があるが、これも2部マッチングの一種とみなす。)本研究の目的は非2部マッチングにおけるマッチングメカニズムの設計・提案である。非2部マッチングでは、2部マッチングと異なり、安定性とインセンティブ条件とを満足するのが困難であるが、本研究では近似的手法によりこの困難の回避を目指す。そのために、計算機シミュレーションの助けを借りつつ、理論的な究明を行う。 平成24年度においては、23年度に延期した計算機シミュレーションを遂行した。対象を非2部マッチングの代表的モデルの1つである「ルームメイト問題」に限定し、集中的かつ大規模に行った。シミュレーション結果に着想を得て、既存モデルに近似的要素を導入した新モデルを構築し、その理論的分析を進めた。新モデルでは、安定性が確保されることと、付加的な条件の下でコア・メカニズムがインセンティブ条件を満足することが予想されるが、まだ証明は完成していない。今後この証明の完成をもって本研究の目的は(内容の上では)一応達せられると考えてよいであろう。 上記に加え、以下2点が24年度の成果である。第一は、2部マッチングの既存結果の抽象的社会選択環境への一般化であり、これは23年度から進めていたものを24年度に改善した。25年度中に学術誌に投稿する予定である。第二は、提携形成モデルにおけるインセンティブ条件の研究であるが、これは23年度までに完了していたものが24年度にInternational Journal of Game Theoryに正式に出版されるに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度においては計算機シミュレーションを濃密に行い、その結果を理論モデル構築に反映させることができた。このモデルは従来の「ルームメイト問題」(非2部マッチングの代表的モデルの1つ)の標準的モデルに近似的要素を導入したものである。このモデルでは、安定性と(付加的な条件の下で)インセンティブ条件とがクリアされることを予想している。 元より、シミュレーションと理論的究明とをインタラクティブに行い、近似的手法によって非2部マッチングでのメカニズムデザインを考えるのが、本研究の目的であるから、まさに目的に叶った結果を得つつあると言える。まだ上記の予想の証明には到達していないものの、本研究には未だ約1年の残余期間がある。23年度には近似的手法の導入まで到達しなかったものであるから、24年度には重要な進展があったと言える。また、本研究では上記以外の付随的な結果をも得ており、これは本研究の目的には間接的にしか貢献しないものの、それ自体重要な成果である。以上により、本研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度における喫緊の課題は、24年度に計算機シミュレーションの結果を受けて構築した理論モデルが、予想された通りに、安定性とインセンティブ条件とを満足することを証明することである。この証明の完成をもっては本研究の目的の内容的な達成と言える。然るに、今後そのように目的が達成されようとも、それは目的に叶った結果の1つが産出されたという意味であって、それ以上為すべきことがないということでは全くない。むしろ、様々な改善、拡張あるいは付随的な分析が考え得るのであるが、そのような理論的成果を得るには、これまで行なってきた理論的究明をさらに精緻化し展開する必要がある。 これらの目的のためには、これまでの理論的究明の作業と同様に、他の研究者との議論、意見交換が重要である。また場合によっては、再びシミュレーションの実施の必要が生ずることもあろう。シミュレーションはこれまで研究協力者との強力な連携により進めてきたが、今後もそれが必要である。これらを実行するために、内外の研究機関への訪問を筆頭に、研究集会等への参加などによって可能な限り他の研究者との連携、接触を持つつもりである。 25年度は本研究の最終年度であるので、研究成果の発信にも精力を注がねばならない。研究期間内に発表できる成果については、速やかに発表する。学術誌への出版には数年かかるのが通常であるので出版まで辿り着く望みは元よりが薄いが、研究期間内に可能な限り投稿する。各研究機関で常時開催されている研究会などでも発信したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の推進方策にしたがい、理論的究明、計算機シミュレーション、研究成果の報告のため、国内外の研究機関を訪問する必要がある。研究代表者は平成25年度初頭の時点で、24年度後半より北海道大学、カルガリー大学(カナダ)への長期出張を継続中であり、この出張においては今後もいくつかの研究機関を訪問する予定である。したがって、この出張の費用が研究費の主要な使途となる。なお、上記の長期主張の会計処理が25年度途中の出張終了時点で行われる予定であるため、24年度助成金に大きな未使用分が発生した。 この長期出張の終了後においても、上記の目的のためにいくつかの出張が必要であろう。これに加え、論文の執筆、投稿の作業をスムーズに行うために、計算機関連物品、事務用品などの購入が必要となろう。その他、これまで通り、研究資料として書籍の購入は随時必要である。これらが研究費の付随的な使途となる予定である。
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Research Products
(2 results)