2011 Fiscal Year Research-status Report
サーチ理論を用いた失業率・雇用システムの統一的分析
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23730191
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
東 陽一郎 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (80327692)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | サーチモデル / 失業率 / 企業特殊的人的資本 / 長期雇用 / 不確実性 |
Research Abstract |
本年度は、均衡において、雇用システムと失業率が同時に決定されるサーチモデルを構築し、分析を行った。このモデルでは、企業は、労働者に企業特殊的人的資本を蓄積させるか否かという意思決定の他に、長期雇用か短期雇用のどちらをオファーするかを同時に決定する。もし自分以外の企業が長期雇用をオファーし、労働者に企業特殊的人的資本を蓄積させると、当該企業は長期雇用をオファーし、労働者に企業特殊的人的資本を蓄積させるインセンティブをもつという、戦略的補完関係がこのモデルには存在する。したがって、あるパラメーターの下では、このモデルは複数の定常均衡を持つ。一つの均衡では、企業が長期的雇用を労働者にオファーし、企業特殊的人的資本が蓄積され、失業率が低い。もう一つの均衡では、企業が短期雇用を労働者にオファーし、企業特殊的人的資本が蓄積されず、失業率が高い。このように、雇用システムと失業率の異なる経済が、個々の企業の意思決定の結果生じたと考えることができる。また、複数均衡の下では、比較静学の性質は均衡が一意である場合と大きく異なる可能性がある。それは、モデルのパラメーターの変化により、均衡がシフトする可能性があるからである。本研究においても、パラメーターの変化により、複数均衡が生じる状況が、単一の均衡のみが存在する状況に変化しうるため、比較静学の性質は均衡が一意である場合と複数である場合で異なりうることが示される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、雇用システムと失業率が均衡で決定されるモデルの構築と分析を行った。これは本年度の研究目的に沿ったものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に構築したモデルの分析を引き続き進め、英語論文にまとめ、海外査読雑誌に投稿することを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を英語論文にまとめ、海外査読雑誌に投稿するためには、事前に、研究会への参加・発表、様々な研究者との研究打ち合わせを通じた意見交換が必要である。研究費をこれらの旅費に支出する予定である。また、専門書の購入も予定している。最後に、研究を英語論文にまとめるために、英文の校閲が必要であるので、研究費を英文の校閲にも支出する予定である。
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