2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730196
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
釜賀 浩平 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (00453978)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 世代間衡平性 / 厚生主義 / 無限効用流列 / 功利主義 / 公理的分析 / 社会的選択理論 |
Research Abstract |
平成23年度では,論文"Infinite-horizon social evaluation with variable population size"の第一稿を完成させた.本論文では,研究目的である「世代人口の可変性を考慮した世代間衡平性の公理的分析」を行うための新たな枠組みを提示し,分析を行っている.新たな枠組みでは,世代人口が可変とされ,現在世代の効用ベクトル(有限次元ベクトル)から無限先までの各世代の効用ベクトル(有限次元ベクトル)を列記した「効用ベクトルの流列」の優劣評価について分析が行われる.各世代の効用ベクトルは共通して有限次元であるが,世代ごとに次元が異なることを許している.従って,新たな枠組みでは,世代内の利害対立と世代間の人口変動を考慮した世代間効用配分の優劣評価方法を分析することができる. 論文の主要結果は以下の通りである.まず,効用情報のみに注目する世代間資源配分の優劣評価を考える「厚生主義」アプローチについて,社会的厚生汎関数の枠組みにおいて公理的特徴付けを与えた.社会的厚生汎関数とは,個人効用関数のプロファイルに対して,世代に関する社会状態の流列に対する準順序を対応させる写像である.社会的厚生汎関数が広範な定義域を有し,無関連対象からの独立性と同時点内匿名性を満たす時には,その社会的厚生汎関数による優劣評価が世代効用ベクトルの流列に対する準順序により表現されるという特徴付けがなされた. 次に,効用ベクトルの流列への優劣評価方法として,Critical-level overtakingと呼ばれる評価方法や,Intratemporal-average overtakingと呼ばれる評価方法など,いくつかの評価方法を提示し,パレート原理や整合性などのいくつかの公理によって特徴付けを与えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は,研究目的である「世代人口の可変性を考慮した世代間衡平性の公理的分析」に関する先行研究のサーヴェイを行い,研究成果の第1稿を完成させることを予定していたが,計画通り進展している.サーヴェイについては,Blackorby, C., W. Bossert, and D. Donaldson, (2005), Population Issues in Social Choice Theory, Welfare Economics, and Ethics(Cambridge University Press),Ryberg, J. and T, Tannsjo (eds.), (2004), The Repugnant Conclusion (Kluwer Academic Publishers)等を中心に先行研究の把握を行った.それらの先行研究では,人口の可変性を考慮した社会的選択が分析されており,それらの先行研究を踏まえ,人口可変性と無限期間の世代間衡平性分析をいかに統合するか検討した.その成果は,論文"Infinite-horizon social evaluation with variable population size"の第1稿とした.また,申請時における平成24年度の計画として,成果論文の第1稿を学会にて報告することを予定しているが,これを遂行する上での準備も既に平成23年度に完了した.平成24年8月にインドにて開催される 11th International Meeting of the Society for Social Choice and Welfare での報告に,論文"Infinite-horizon social evaluation with variable population size"で応募を行い,受理された.
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は平成24年4月より所属機関を早稲田大学から上智大学に異動するが,文献収集等に関する研究遂行上の問題は全くなく,予定通りの計画遂行が可能である.平成24年度の研究活動は,論文"Infinite-horizon social evaluation with variable population size"の学会報告,推敲,国際査読付き雑誌への投稿を軸に進める予定である.これは申請時の計画と同様である.学会報告として,8月に11th International Meeting of the Society for Social Choice and Welfareにて報告を行う.社会的選択理論の専門家が多数参加する国際学会であり,そこでのコメントに基づいて論文の推敲を行う.推敲を完了させた後には,英語論文校閲サービスを利用して論文の完成度を高める予定である.校閲終了後に国際査読付き雑誌に投稿し,採録を目指す. また,論文"Infinite-horizon social evaluation with variable population size"の完成を進めていくのに並行して,世代人口の可変性を考慮する世代間衡平性の公理的分析について当該論文では分析しきれていない更なる問題についても研究を進めていく.当該論文では,人口の可変性に対処する上で,倫理学者デレク・パーフィットの「厭わしい結論」という人口倫理学における議論を援用しながら分析を行ったが,パーフィットの議論以外にも人口倫理学における重要な議論がいくつか存在する.それらの議論を援用した分析を進め,世代間効用配分に対する新たな優劣評価方法の分析を進める予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の使用について,まず既に参加が決まっている国際学会11th International Meeting of the Society for Social Choice and Welfareへの参加費用があげられる.学会開催地はインド(開催都市:デリー)であり,学会開催期間は8月17日から8月20日までの4日間である.開催期間の前後各1日分の滞在も含め,計6日間の滞在費および交通費を合わせて,計300千円程度の支出が予定されている.学会参加後には,当該国際学会で得られたコメントを活かし,報告論文である"Infinite-horizon social evaluation with variable population size"の推敲を行い,完成稿の作成を進める予定であるが,その際に必要となるであろう追加的な文献の収集費用(和洋書購入費用)として,計20千円程度の支出を使用計画に組み入れている.論文が完成した後には,英文校閲サービスを利用して論文の英文改善を行い,国際査読付き雑誌に投稿する予定である.その際の英文校閲サービス利用費用として,100千円程度の支出を見込んでいる.また,世代人口の可変性を考慮する世代間衡平性の公理的分析について,当該論文では分析しきれていない更なる問題がいくつかあり,それらの問題について別の論文として研究を進めることも予定しており,その研究遂行に必要な追加的な文献収集費用(和洋書購入費用)として30千円程度の支出を予定している.また,研究遂行に必要な論文の印刷を行うレーザープリンタのトナー(Canonカートリッジ318)を補充する必要があり,その購入費用として約50千円の支出を予定している.
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