2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730201
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
川森 智彦 大阪経済大学, 経済学部, 講師 (70550531)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ゲーム理論 / 提携形成 / 交渉 |
Research Abstract |
研究期間の初年度に当たる本年度は,合意の履行が不完全な場合の提携交渉について,いくつかの例を考察することを行った.例えば,提携交渉の1形態である連立政権の形成についての例を考えた.連立政権の形成において,政党が考える重要な点は,どの政党と政権を樹立するかと政権獲得から得られる利益をどのように政権内で分配するかという2点である.連立相手の選択と連立内での利益の分配は,同時に決定されるというのが既存文献で扱われている状況である.しかし,連立形成後,利益の分配についての合意が反故になる場合が現実的に見られる.そうした状況を突き詰めて考えると,利益の分配について,連立相手を選ぶ段階で取り決めることは困難ということになる.そこで,連立の相手の選択をまず交渉で決め,連立政権が樹立された後に,政権内で利益の分配を決めるというモデルを考えることにした.このモデルの定常部分ゲーム完全均衡を求めたところ,交渉力の高い(すなわち,我慢強い)政党が,提案者として,連立相手を選び,連立の枠組みを提案すると,その提案は,連立相手から拒否されるということが確認できた.次いで,この理由を考えてみた.連立相手として選ばれた政党(提案に応答する立場にあるので,応答者という)が,交渉力の高い政党の提案を受け入れ,連立を形成すると,形成後の利益の分配の交渉において,交渉力の高い提案者の取り分が大きくなる,すなわち,応答者の取り分が小さくなるため,応答者としては,提案を拒否し,より交渉力の弱い政党と連立を組もうとすることが理由であると思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
他の複数の研究に取り組む必要があったため,本研究がやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
連立政権の形成をめぐる交渉にとどまらず,より一般的なモデルの構築を目指す.さらに,合意の履行の不完全さの度合いを一般化することも考える.構築したモデルについて,ゲーム理論を専門とする研究者のコメントを得て,さらに改善を図る.また,文献の調査も並行して行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ゲーム理論や政治学関連の書籍を購入する.専門家のコメントを得るため,専門家のもとを訪れたり,学会の動向を探るため,各種学会に参加する(旅費を使用する).
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