2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730202
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
尾崎 祐介 大阪産業大学, 経済学部, 准教授 (80511302)
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Keywords | 高次リスク回避度 / 予備的貯蓄 / 期待効用 / 曖昧性回避 / 多属性効用 / 国際情報交流 |
Research Abstract |
昨年度は主に二つの研究を進めた。①昨年度、Eeckhoudt and Schlesinger (2006, American Economic Review) の枠組みを用いて高次リスク回避度の特徴付けを行った。しかし、論文を投稿したところ、掲載拒否になってしまった。一つの理由として、私が提案した高次リスク回避度の経済学的な含意の乏しさが挙げられる。そこで、昨年度は経済学な含意について分析を進め、私が提案した高次リスク回避度が均衡利子率と結び付けられることを示した。②私が提案した高次リスク回避度は局所的な性質だったので、その大域的な性質について分析を行った。Eeckhoudt and Schlesinger (2006, AER) の枠組みを複合くじとして考えることで、Ross のリスク回避度の一般化によって大域的な性質が捉えられることをしめした。これらの二つの結果について、早い段階で論文としてまとめ、国際誌への投稿を行う予定である。 また、高次リスク回避度に関連した経済学・ファイナンスの問題として以下の二つを行った。一つ目は、滑らかな曖昧性回避を用いた企業活動の分析である。期待効用の枠組みにおいて、これらの分析は高次リスク回避度が重要な役割を果たすことが知られており、本研究においても高次リスク回避度に一定の条件を課すことで、曖昧性回避が企業活動に与える影響を明らかにした。もう一つは、後悔回避度が損失削減努力に与える影響の分析を行った。この研究でも、期待効用の枠組みにおいて、高次リスク回避度が重要な役割を果たすことが知られている。しかし、後悔回避度では高次リスク回避度に特別な制約を課すことなく、後悔回避が損失回避に与える影響を明らかにした。これらの結果も論文としてまとめ、国際誌への刊行を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における最大の課題は、Eeckhoudt and Schlesinger (2006, American Economic Review) の枠組みを用いて高次リスク回避度の特徴付けを行うことである。これらについては、昨年度までで概ね終えているので、予想よりも早い進度で研究を進めており、研究課題の進捗状況は極めて順調であると言える。一方で、研究課題をまとめた論文が国際誌に掲載拒否されたので、それらの査読者のコメントから新たな課題が生まれている。そのため、当初に考えていた以上の分析が必要になり、結果として研究課題の完成には三年間の研究期間が必要になった。今年度の早い段階で分析結果を論文としてまとめ、できるだけ研究期間中に論文が国際誌に掲載許可をもらえるように最大限の努力をする。 本研究課題の副産物として、期待効用の一般化として位置付けられる非期待効用における高次リスク回避度の研究が挙げられる。当初は期待効用の枠組みにこだわっていたが、短期間に高次リスク回避度に関する色々な研究が進められ、それらをフォローすることにかなりの時間を要してしまった。しかし、非期待効用においては、高次リスク回避度の分析が十分に行われているとは言えず、そちらの研究の方により勝機があると考えている。特に、理論的な研究が中心になっているので、より応用的な視点で研究を進めることが肝要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は二つのことを念頭に置いて研究を進めていきたい。一つは、本研究課題の最大の目的である高次リスク回避度の分析を論文としてまとめ、国際誌に掲載することである。もう一つは、非期待効用の枠組みを用いた高次リスク回避度の研究を進めて、本研究改題を将来の研究に繋げていくことである。 本研究課題における理論的な分析はほぼ終えている。しかし、研究の完成という点では十分ではない。先行研究との関連や理論的な結果が持つ経済学的な含意などについてより明確に示す必要がある。それらを注意深く行い、今年度のなるべく早い時期に論文としてまとめ、国際誌に投稿する予定である。 本研究課題としていくつかの派生的な研究が考えられた。その一つとして、本研究の枠組み以外での高次リスク回避度の分析が考えられた。しかし、この状況は申請時とかなり変化して、この二年間で非常に多くの研究が生まれ、それらの研究をフォローすることに時間を要してしまうという状況になってしまった。そこで、少し視点を変えて、昨年度の途中から期待効用を一般化した表現として与えられる非期待効用を使った高次リスク回避度についての分析を進めている。応用研究を含めると、行動経済学との関連もあるので、非常に多くの研究が残されている有望な分野と考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費で最も支出が費やされるのは、旅費である。特に、国際学会への参加を目的とした旅費である。論文を完成させるためには、国内外を問わずに学会での研究発表が必要になるが、その中でも国際会議への参加・発表は重要となる。理由は主に二つある。一つ目は多くの国際誌への掲載を経験している研究者から直接、アドバイスを受けることで論文が改善するからである。研究の最先端は非常に競争的なので、少しの差で論文掲載の諾否がきまる。その重要な少しの改善が経験豊富な研究者からのアドバイスで可能になる。二つ目は研究の動向はとても早く、現在の学会の関心について感じることができるからである。インターネットにより最新の論文を手に入れることが可能になっているが、実際にどのような研究に関心があるのかについて国際会議での参加が不可欠である。なぜなら、発表時のオーディエンスの熱気は実際に参加しないと体験できないからである。 その他には研究室のメインパソコンの買い替えも検討している。現在のパソコンを使い始めて、5年が経過しており、故障などのリスクを勘案すると、買い替え時期と言えるからである。また、来年度以降の研究費については不確実性があり、科研費の最終年度となる今年は買い替えの機会だからである。 その他には研究に必要となる書籍、文房具、パソコン関連機器の購入を検討している。
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Research Products
(3 results)