2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730210
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
野田 英雄 山形大学, 人文学部, 准教授 (90347724)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ベイズ法 / 平滑化事前分布 / 技術進歩 / TFP / 生産関数 / 経済成長 / 景気変動 / 構造変化 |
Research Abstract |
近年、経済成長の推進力として技術進歩の重要性は益々高まっているが、その推定法は現在においても十分確立されているとは言い難い。本研究の提案法は、「技術水準の非単調な変動を適切に推定できない」といった従来の生産関数アプローチの困難をベイズ的方法によって克服するものである。結果として、技術進歩の挙動について従来見逃されていた新たな知見をもたらし、「計測に基づく理論」の発展に寄与しうる。 さて、技術進歩の推定において鍵となるのはTFPトレンドの把握である。従来の生産関数アプローチでは、便宜的に「期間全体を通してTFP成長率は正の一定値である」といった仮定をおく場合が多い。これは「TFPが指数的に上昇する」というモデル上の制約を課すことを意味する。しかし、TFPが実際にそうした単調な動きを示すとは限らず、柔軟性を欠いたモデリングといえる。本研究では「TFPが非単調な振る舞いをする」ことを想定し、モデルの時変パラメータに平滑化事前分布を導入する。このように柔軟性を備えたモデル設定のもとで、TFPの複雑な挙動を捉えることが可能となる。 上述の提案法を中国経済のデータに適用したところ、推定結果から次のことが明らかにされた。(1) 大躍進運動や文化大革命の時期にTFP成長率は急速に低下した。(2) 改革開放政策が推進されて以降、TFPは緩やかな上昇傾向を示している。この研究成果は、Journal of Economic Research (Vol.16, No.2) に掲載された。 本研究の方法論は、技術進歩を扱う動学理論のモデル構築に際して有益な示唆を与える。したがって、技術進歩の実証研究の有望な新規手法としてだけでなく、技術進歩に関する経済動学全般への分野横断的波及を通じた貢献が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究では、開発した手法を中国経済のデータに適用したところ比較的良好な結果を得た。今後、モデル・推定方法の完成度を高めていくうえでの基盤ができたと考える。また、研究計画の1年目で成果の一部が国際学術誌に掲載された。以上の理由から、概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、モデル・推定方法の一般化を図るとともに、日本、米国、韓国のデータを利用した実証分析を行うことを計画してる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は、国際会議・国内学会出席の旅費、学術図書の購入、論文投稿における英文校正等への使用を予定している。
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Research Products
(2 results)