2011 Fiscal Year Research-status Report
国民健康保険財政における保険料(税)および補助金の決定メカニズムに関する実証分析
Project/Area Number |
23730217
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川村 顕 早稲田大学, 政治経済学術院, 助教 (10422198)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自治体財政 / ソフトな予算制約 / 地方政治 / 空間計量経済学 |
Research Abstract |
平成23年度は第1に、市町村国民健康保険と介護保険を比較し、それらの効率性の違いが予算システムによるものであるかを検証した。23年度上半期はまず、国民健康保険の予算のうち、補助金がどのようなメカニズムで投入されるかについて調査しつつ、国民健康保険財政にかかわる先行研究を渉猟した。次に、国民健康保険および介護保険の財政データをクリーニングし、分析の準備を行った。下半期にはそれらのデータセットを用い、補助金メカニズムの違いが2つの保険間に効率性の違いを生み出しているという仮説を統計的に検証した。その結果、国民健康保険への補助金は介護保険に比べ、有意に非効率性を助長していることが明らかになった。 第2に、国民健康保険の保険料決定要因として政治的要因が関わっているかを検証するためのデータ整備を行った。このデータは紙媒体で公開されているため、研究補助者を雇用して電子化を行った。これにより、市区に関する党派別議席数や首長の支持・推薦、得票率等を過去30年分利用可能となった。これは今年度以降の分析にて使用する。 第3に、平成24年度に分析予定である、保険者間の空間競争を分析するフレームワークについて吟味するために、自治体間競争の文献、および、空間競争に関連する文献を渉猟した。特に自治体間競争については、tax competitionの文献を中心に吟味した。ただ、政治経済学の文脈で地方自治体の競争を取り上げた分析は、私の調査した限りでは多くなかったため、今後も文献渉猟を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はおおむね予定通りの進行であった。ただ今年度は、国民健康保険と介護保険の比較において、分析対象期間を延ばすことを検討しているので、より効率的な研究推進を心掛ける必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、上半期に国民健康保険と介護保険の比較に関する研究を完成させ、研究論文としてまとめる。また、地理情報システム等を用い、地方自治体間の隣接関係のデータ化を行い、下半期での分析に向けた整備を行う。 下半期には、国民健康保険財政における地方自治体間の競争に関する分析を行い、論文としてまとめる。また、前年度に作成した自治体政治にかかわるデータと国民健康保険財務データとのリンケージを行った後、データから確認できる事実について整理する。 平成25年度は、24年度の知見をもとに統計的推論を行う。さらにその結果をもとに研究論文を完成させ、成果を発信する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費90万円の多くは、データ作成に充てる予定である。具体的には、研究補助者雇用のための賃金・謝金(30万円)、研究補助者に使用させるPC・ソフトウェアなどの購入代金(30万円)を想定している。残りの研究費は、学会出張等の旅費に充当する。
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