2012 Fiscal Year Research-status Report
日本の環境技術は外国と較べて優れているか―特許データを用いた研究開発動向の分析―
Project/Area Number |
23730224
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Research Institution | National Institute of Science and Technology Policy |
Principal Investigator |
枝村 一磨 文部科学省科学技術政策研究所, 第2研究グループ, 研究員 (20599930)
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Keywords | 環境技術 / 特許 / 研究開発 |
Research Abstract |
本研究では、研究開発活動の代理指標と考えられる特許の情報を使い、日本が欧米と比較して、環境技術に関する研究開発が進んでいるか否かと、環境技術に関する研究開発の価値が有意に高いか否かを、経済学の視点から分析する。具体的には、以下の3つの分析を行う。一つは環境技術に関する企業の特許出願・登録動向の分析、もう一つは環境技術に関する特許価値の分析、もう一つは環境技術に関する特許生産関数の推計である。 平成24年度においては、平成23年度に構築した分析用データベースを用いて、環境技術に関する企業の特許出願動向を分析した。具体的には、自動車排出ガス浄化装置(触媒)に関する技術の特許出願と自動車排出ガス規制に注目して分析を行った。従来、自動車排出ガス規制等の環境規制は、企業にとって追加的なコストとなり、研究開発活動を抑制させる効果を持つと考えられてきた。一方、環境規制によって相対的に高くなった環境対応コストを節約するために、企業は研究開発を促進させるとも考えられる。そこで、自動車排出ガスに関する環境規制と企業の研究開発活動について、企業の特許出願動向に影響を与えると考えられる企業規模や研究開発費をコントロールして分析を行った結果、自動車排出ガス規制の改正が企業の触媒技術に関する特許出願件数を増加させていることがわかった。この結果は、環境規制が企業の環境技術に関する研究開発活動を促進させる可能性を示唆している。つまり、従来の考えでは相反すると考えられていた環境政策と技術政策・産業政策が融合できる余地があることを定量的に示唆しており、今後の政策を考える上で重要な基礎資料となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、研究開発動向の代理指標と考えられる特許の情報を整理し、日本が欧米と比較して、環境技術に関する研究開発が進んでいるか否かと、環境技術に関する研究開発の価値が有意に高いか否かを、経済学の視点から分析することである。平成24年度は、構築した分析用データベースを用いて、まず日本の事例について環境技術に関する研究開発が進んでいるか否かを確認し、環境技術に関する研究開発の価値が有意に高いか否かの統計分析を実施した。統計分析の結果、期待された成果を得ており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
構築した分析用データベースを用いて、環境技術に関する特許出願動向を欧米の事例で分析し、日本が欧米と比較して、環境技術に関する研究開発が進んでいるか否かと、環境技術に関する研究開発の価値が有意に高いか否かについて、統計分析を実施する。また、随時最新の特許データ及び財務データを追加してデータベースを更新し、最新の動向を反映させた統計分析も行う。得られた研究成果は、国内外の学会(Patent Statistics for Decision Makers2013等を予定)で報告することに加え、一般的な形式の論文としてまとめ、ディスカッションペーパーとして刊行する。学術論文として投稿も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、年度内に開催予定であった学会("Comparative Analysis of Enterprise Data")の開催が次年度になったために生じたものであり、当該学会の参加に必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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Research Products
(2 results)