2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730228
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中島 賢太郎 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60507698)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 空間経済学 / ネットワーク / 産業集積 |
Research Abstract |
今年度は企業間の取引関係データを整理し,その地理的特性についての分析を開始した.まず最初に企業の立地そのものの地理的特性を分析することを行った,ポイント立地データから地理的集積を検定する手法を適用した結果,日本において,製造業およびその他サービス業の立地が地理的に集積していること,またその範囲が60km程度であることを示した.また,製造業における結果は先行研究におけるイギリスの産業集積の特性に極めて酷似していることがわかった.さらに,サービス業を対象とした集積の研究はデータの制約もあり,これまであまり行われてこなかったため,サービス業の集積についても分析した本研究はその点でも大きな貢献があるといえる.その成果はJournal of the Japanese and International Economies誌に受理された.続いて,取引関係の地理的特性についての分析を行った.その結果,日本において製造業の取引関係が地理的に極めて強く集積していることが示された.またその集積の範囲は先の立地集積範囲と極めて酷似していることから,企業間取引が産業集積の一つの重要な要因である可能性が強く示されたといえる.さらにこのような分析を進めて,企業の取引関係における意志決定問題について地理的特性に注目して分析する研究を進めた,現在のところ,企業の取引関係から得られる利益に対して,地理的距離が摩擦要因として極めて重要な役割を果たしているという分析結果が暫定的に導かれている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主要な目的は,企業間取引関係を通じた集積効果について実証的に検証することであった.今年度既に予備的分析としての企業立地についての地理的特性の分析が終了し,その成果は査読付雑誌への受理がなされるほどの完成度となった,さらに2件の研究プロジェクトによって取引関係を通じた集積効果について分析を行っているが,集積の統計的判定や,その範囲の測定など,既に具体的な成果が出つつあり,さらにいずれのプロジェクトも既に査読無しのディスカッションペーパーとしての公表が間近なところまで研究が進展しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は現時点で得られた成果を基礎として,分析の精緻化,頑健性の上昇を目指す.特に企業間取引に関する意志決定問題の分析については,ハードウェアの制約等から,サンプルを絞っての分析にとどまらざるを得ず,未だ大規模データの特性を十分に活かし切れていないといえる.今後は再度分析方針を検討し,より大規模データに適用しやすい分析手法を開発・採用することや,計算機環境の整備などを行うことによって,大規模データからのリッチな情報を十分に活かしたうえで集積の経済の統計的同定を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は企業間取引の意志決定問題の分析に集中して分析を行う予定であるが,使用するデータが大規模なデータでありかつ反復計算を多用する統計手法が必要なため,計算機環境を大幅に整備する必要がある.物品費はその点を中心に使用する予定である.また,現在の暫定的な結果を基に学会報告を行い,議論を行うことで研究の進展を図る.そのための旅費を使用する予定である.また,成果を査読誌に投稿することも行うため,そのための英文校正費,投稿料等が必要となる.
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