2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730228
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中島 賢太郎 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60507698)
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Keywords | ネットワーク / 企業間取引 / 空間経済学 / 産業集積 |
Research Abstract |
研究期間を通じて企業間取引ネットワークと経済活動の空間分布についての実証的検証を行った.最終年度は特に以下の3点,1. 取引ネットワークの構造が企業立地に与える影響について,2. 取引ネットワークの地理的集中について,3. 取引ネットワーク構築の際に地理的距離が果たす役割について について重点的な研究を行った.まず,1. については,企業間取引関係のネットワーク構造と企業立地との間の統計的に優位な関係性を発見した.特に,産業内取引相手数の不平等度と企業の分散立地との間の強い関係が発見された.2. では,取引関係の地理的集中についての統計的検定を行った.その結果,日本において企業間取引関係は統計的に有意に集積していることが示された.3. は,企業間取引において地理的距離がもたらすコストを推定した.その結果,地理的距離以外に企業間取引において重視される要因であると考えられる,企業規模,企業信用などを制御したうえでも地理的距離は企業間取引の妨げになること,さらにこの地理的距離の効果は,財の買い手に対し,売り手の方がより大きいことがわかった.以上の成果は全てディスカッションペーパーとして既に公表され,また国際学術誌への投稿が準備されている. 企業間の取引が経済活動の空間分布に大きな影響を与えていることについては,理論的には指摘されてきたが,実際のデータからは,産業連関表のように集計されたデータでしか捉えることができず,実際に企業間取引が地理的に集中しているのか,地理的距離は企業間取引の妨げになるのか,あるいは,地理的距離のみならず,取引ネットワークの構造は企業立地を規定するのか.こういった疑問にこれまでの研究は答えることができなかった.本研究課題は,取引関係のミクロデータを活用することで,以上の論点について一定の回答を与えることができた点で,極めて意義深いと考えられる.
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