2011 Fiscal Year Research-status Report
贈与税および住宅ローン負担が生前贈与額に与える影響についての実証分析
Project/Area Number |
23730230
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岩田 真一郎 富山大学, 経済学部, 教授 (10334707)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 生前贈与額 / 贈与税 |
Research Abstract |
政府はここ数年景気刺激策の一環として住宅取得資金の贈与に対する贈与税率を緩和し、生前贈与の促進を通じて住宅消費の拡大を目指している。しかし、本当にこの政策は親からの生前贈与の増加に貢献しているだろうか。本年度は、贈与額と贈与税率の関係について、まず理論的に考え、その後実際のデータを用いて、その関係を実証的に検証した。 理論的に考えると、贈与税率の変化が親の贈与額に与える影響は確定しない。贈与税率が低下すると、子は有利になった贈与をより多く求めるようになる。親はその期待に応えようと、贈与額を増やそうとするだろう。しかし一方で、贈与税率の低下は、子の所得の増加と同じ効果を同時にもたらす。利他的な親は一般に所得が低い子を助けようとする。このため、先とは逆に贈与税率の低下は贈与額を減らす働きも持ち合わせる。以上から、贈与税率の緩和は必ずしも贈与を増やすとは限らない。さらには、贈与税率の緩和により、所得改善効果が大きくなると、贈与税率の緩和がむしろ贈与額の減少を招くというクラウディング・アウト現象を引き起こす可能性もある。 そこで、本研究では、「戸建て注文住宅の顧客実態調査」の2001年から2008年までの個票データ(サンプル数は8年間で22,387)を用いて、贈与税率の低下が親の贈与額に与える影響を実証的に検証した。この調査は、住宅生産団体連合会が東京圏、名古屋圏、大阪圏、地方都市圏の戸建て住宅メーカーに調査票を配布し、その顧客に対して贈与額を尋ねている。したがって、この調査の個票データから本研究が注目する変数を手に入れることができる。また、2001年から2008年の時期は贈与税率が制度変更を通じて緩和された時期と一致する。実証研究の結果、贈与税率の緩和が贈与額に与える影響は確定しないことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績概要」で述べたデータのサンプルを用いて、贈与額関数を推定した。推定法については次の点を考慮した。 第一に、贈与については贈与を与えない親も観察される。このとこを考慮して、贈与額関数はトービット型の推定を行った。 第二に、贈与税の実効税率は親が提供する贈与額に依存するため、内生性がある。そこで、観測時期および観測地点毎の平均的な贈与税率を計算し、平均贈与税率を操作変数として用いて実効税率を推定し、内生問題を解決するように努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
贈与税率同様に、住宅ローン減税や住宅ローン金利低下も子の住宅消費額を変化させるため、親の生前贈与額に影響を与えると思われる。そこで、贈与税率の代わりに子の住宅ローンの負担に関わる変数である住宅ローン減税の規模や住宅ローンの金利が親の贈与額に与える影響を今年度同様に理論的に実証的に分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会参加費、および英語校閲費として主に使用する計画である。
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