2012 Fiscal Year Research-status Report
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23730235
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
近藤 絢子 法政大学, 経済学部, 准教授 (20551055)
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Keywords | 社会保障 / 医療経済 / 労働経済 / 国際研究者交流 / アメリカ:カナダ |
Research Abstract |
1.平成23年度より進行中であった、1961年の国民皆保険導入の事例分析をさらに進め、皆保険導入によって医療需要が大幅に増加したこと、それに比べて医療の供給や死亡率の変化は小さかったこと、などの結果をまとめて、国際的な学術雑誌で発表した。 2.企業の採用行動を通じた労働市場への影響の分析の一環として、厚生年金の支給開始年齢の引き上げとそれに伴って改正された高年齢者雇用安定法が、雇用に与えた影響の分析を開始した。平成24年度は統計法第33条に基づいて、総務省と厚生労働省に必要なデータの二次利用申請をし、まずは高年齢者にあたえた直接的影響の分析を行った。 年金支給開始年齢の引き上げ及び改正高年齢者雇用安定法によって、高年齢者を多く抱える事業所にとっては従来ならば定年退職していたはずの労働者を引き続き雇用しなければならない状況が発生する。この状況を政策変数として利用し、まずは継続雇用対象者自身の雇用形態(社会保険料の支払いが必要なフルタイム労働者として雇用し続けるか否か)や就業率そのものの変化を分析した。現時点での暫定的な結果としては、こうした政策の結果として実際に60代前半の就業率は著しく増加し、特にその増加が大企業の従業員で顕著であること、一方で、一部では正規雇用の増加もみられるものの、継続雇用のかなりの部分は60歳で定年退職したのちに非正規雇用へ切り替えられた者であることがわかった。 日本は世界でも最も高齢化の進展した国の一つであり、高年齢者雇用安定法のような法律はまだ他にあまり例がないが、将来このような政策を検討している国はヨーロッパをはじめとして多くあり、日本の事例の分析は学術的にも政策資料としても、国際的にも大きな貢献となることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国民皆保険の直接的効果の分析については、予定通り改訂を重ねて、学術誌への掲載を果たした。また、企業の採用行動を通じた労働市場への影響の分析についても、必要なデータの申請作業を終え、データ解析を開始し、上述したように暫定的な結果も出た。平成25年度に実施される国際学会での報告も採択されており、おおむね予定通りに進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の年金支給開始年齢引き上げと高年齢者雇用安定法についての分析結果について、国内ないし国際学会で報告をしフィードバックを得、さらに分析を進めて年度内に査読誌への投稿を目指す。また、これらの政策変化によって、継続雇用をしなければならなくなった企業の採用行動全般に変化が生じたか否かの分析も開始する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に交付を受けた研究費が大幅に残っているが、これは平成25年度の5月にアメリカ、6月にデンマークで開催される2つの国際学会に採択されたために、旅費の支出を次年度にずらしたためである。次年度使用額の大半はこの2つの国際学会の旅費と参加費に充てる予定である。 他、当初より平成25年度に使用する予定だった研究費は、国内外の学会発表のための参加費や旅費、研究資料としての書籍購入、必要に応じて打ち合わせのために研究代表者が研究協力者を訪問するか招聘する際の旅費、論文の英文校正料などに使用する予定である。
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Research Products
(6 results)