2011 Fiscal Year Research-status Report
企業が取り組む地域福祉支援の総合的インセンティブ設計
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23730238
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大床 太郎 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 研究員 (40584579)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | CSR / ワークライフバランス / 経済評価 / 育児支援 |
Research Abstract |
本年度は初年度にあたるため,1) 収集済み既往文献整理と追加,2) 神戸市の「こうべ男女いきいき事業所表彰」担当部局へのヒアリング,3) 母親や子育てに明るい市民団体へのヒアリング,4) 基礎情報収集としての一般市民向けアンケートを実施した.まず,文献を整理したところ,フェアトレード商品に係る支払意志額推計研究が本研究の参考となること,健康経済学における支払意志額推計事例もレビューすべきことが明らかとなり,収集文献を追加した.次に,神戸市市民参画推進局市民生活部男女共同参画課にヒアリングに伺ったところ,次年度以降に計画していた従業員アンケートに協力する企業は市の立場上紹介できないこと,一般的なウェブアンケートの中で,有職者に限定してその代替としたのちに,結果を持参して企業にインタビューすることは可能かもしれないこと,厚生労働省に「くるみん」という事業があることが明らかとなった.さらに,京阪エリアで子育てに係る取り組みを展開している,「赤ちゃんからのESDとよなか」代表の上村有里氏にインタビューを実施したところ,親子関係の中でも,とりわけ中学生・高校生と親とのふれあいの機会が減少していることに,実践的な処方箋が必要であると感じており,また,実際に産休をとっている氏の友人の話から,保育所の認可・無認可の違いがよくわからない,ごはんの食べさせ方などごくごく身近な相談に乗ってくれる人がほしいなどの意見があることをご教示いただいた.以上を受け,またさらに広く情報を集めるべく,神戸市周辺地域において「仕事と子育てに関するアンケート」と題して,インターネットアンケートを実施したところ,子育てに関して,経済的支援,託児所・サービス,医療制度・サービスの順に重視されていたほか,子どもの身の回りの安全対策が次点を獲得するなど,安全・安心が危惧されている現状を示すような量的・質的情報が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度である平成23年度は,広く関係機関等から基礎的な情報を抽出すること,市民アンケートを実施して子育て支援に係る意識を抽出することに集中した.まず,既に収集していた文献の整理を行ったところ,本研究が対象としているのはCSRやワークライフバランスの一環としての,企業の地域子育て支援であったが,フェアトレードや健康経済学といった,ともすれば異分野ともみえる領域に有用な文献が多数存在していることが明らかとなった.そして,神戸市市民参画推進局市民生活部男女共同参画課に行ったヒアリングから,一般的なウェブアンケートの中で,有職者に限定してその代替としたのちに,結果を持参して企業にインタビューするという次年度以降の修正点,厚生労働省の「くるみん」に係る情報収集の有用性が明らかとなった.この2点は,申請当時の研究計画を修正・追加すべきことが意識された部分である.また,「赤ちゃんからのESDとよなか」代表の上村有里氏に実施したインタビューから,子と親とのふれあいの機会に対する実践的な処方箋の必要性,保育所の認可・無認可の違いといった託児所・サービスや,ごはんの食べさせ方といった身近なこと係る情報をこそ求められている可能性が示唆された.そして,実施したインターネットアンケートから,子育てに関して,経済的支援,託児所・サービス,医療制度・サービスの順に重視されていたほか,子どもの身の回りの安全対策が次点を獲得するなど,安全・安心が危惧されている現状を示すような量的・質的情報が得られた.この2点も,申請当時の研究計画が円滑に実施できた部分である.以上に鑑みるに,修正・追加点が存在するものの,おおよそ申請当時の研究計画を円滑に遂行できた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は,当初の研究計画補正,市民・企業・行政への総合的な情報提供の順に行う.平成23年度の結果を受けて,1) 追加収集資料の整理,2) 厚生労働省「くるみん」の精査,3) 有職者向けウェブアンケートの実施と分析を次年度に行う.また,4) 有職者アンケートの分析結果を学会やジャーナル投稿などを通して情報発信するほか,5) 企業ヒアリングの可能性も探る.1) 追加収集資料の整理,2) 厚生労働省「くるみん」の精査,3) 有職者向けウェブアンケートの実施と分析によって,平成23年度に実施した中で,申請当時の研究計画を修正・追加すべきことが意識された部分を補正する.これによって,企業に求める子育て支援とは何か,どの程度,どのようなサービスを求めているのか,あるいは不要であると感じているものは何かを明らかにできる.4) 有職者アンケートの分析結果の情報発信に並行して,同結果を手にしたうえで5) 企業ヒアリングの可能性を探ることで,市民・企業あるいは行政に対して,企業が取り組むべき子育て支援に係る情報提供が総合的に実施できる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に申請している予算は直接経費で130万円である.予算の配分計画は以下のとおりである.まず,有職者向けインターネットアンケートについて,神戸市周辺地域で十分なサンプル数として,1000サンプル確保する.そのため,100万円の予算をアンケートに充当する.1サンプルあたり1000円として計算した.また,英文ショートペーパーのネイティブチェック費として,10万円を充当する.そのほか,追加的ヒアリングや調査打ち合わせ等国内旅費などに,予算の20万円を充当する.次年度は所属が獨協大学であるため,調査地である神戸市周辺地域とで往復3万円程度+宿泊費,4~5回程度移動するとして概算した.
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