2012 Fiscal Year Research-status Report
雇用の受け皿としての環境産業について-開放経済下での分析-
Project/Area Number |
23730246
|
Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
杉山 泰之 福井県立大学, 経済学部, 講師 (00533605)
|
Keywords | 国際貿易 / 環境産業 / 貿易政策 / 環境政策 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は貿易と環境に関する問題のうち、汚染削減のための財・サービスを提供する環境産業の役割に着目するものである。環境産業の発展には、環境の改善はもちろんのこと、この産業における雇用の促進が期待されている。そこで本研究では、環境問題と失業の存在を同時的に考慮した貿易モデルを構築し、その上で貿易政策や環境政策等が失業率に与える影響を、環境産業の拡大・縮小との関係を含めて明らかにする。そして、これらの市場の歪みを是正するための最善な政策の組み合わせや、失業と環境問題を同時的に是正する次善の政策について、体系的に提示することが目的である。 平成24年度については、これまでの研究をさらに進め、2本の論文を完成させた。具体的には、(1)公正賃金による失業が存在し、かつ、汚染削減財・サービスが輸入される小国開放経済の下で、排出税、汚染削減財・サービスの購入もしくは生産に対する補助金、貿易自由化(関税引き下げ)の効果について理論的に分析し、これらの政策が失業、環境、経済厚生に及ぼす影響を体系的にまとめた。次に、(2)寡占的な環境産業の分析について、失業や国際寡占競争は想定していないものの、従来の研究をより一般的な排出関数の下で再検討し、最適な排出税について新たな知見を得た。 ただし、これらの論文を関連する査読付きジャーナルに投稿したものの、残念ながら今のところ掲載には至っていない。平成25年度はこれらの論文を具体的な成果として公表するとともに、特に(2)について、国際寡占競争や失業を伴うケースに発展させていくことが目標である。以上の研究計画を着実に実行することで、本研究課題に関する3年間の研究の成果と今後の課題を体系的にまとめることにしたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度開始時点での計画のうち、「小国のケースで排出税や装置購入・装置生産補助金の効果を比較検討し、一つの論文としてまとめる」という点については、概ね実現できた。また、「不完全競争市場への拡張」についても、寡占的な環境産業の研究について一つの成果を得たことから、何とかきっかけはつかめたかもしれない。 しかしながら、まだこれらの論文を公表するに至っていないこと、また、当初は寡占的な環境産業についての雇用効果をも明らかにする予定であったことを考えると、残念ながら達成度としてはやや遅れているといわざるを得ない。これらの点について、できる限り研究の成果を形にしていくことが必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
この2年間の研究により、競争的な環境産業のケースについては、排出税、汚染削減財・サービスの購入もしくは生産に対する補助金、貿易自由化(関税引き下げ)という4つの政策が失業、環境、経済厚生に及ぼす影響を体系的にまとめることができた。 その一方、不完全競争下の環境産業のケースについては、(1)賃金や雇用への影響、(2)国際寡占のケース、(3)環境産業のタイプなどによって様々なケースが考えられるため、研究の余地は十分に残されているといえる。本研究課題では、特に賃金や雇用への影響は分析することが目標であるが、そのためにはそもそも(2)や(3)の観点から環境産業を体系的に把握できていなければならない。 そこで不完全競争下の環境産業については、これまでの研究を上記(2)や(3)の観点でまとめること、その上で賃金や雇用への影響を分析するための理論的な枠組を提示することを当面の目標として取り組んでいきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に必要となる機器類の調達はほぼ予定通り進んでいる。その中で当該研究費の次年度使用が生じた理由は、(論文の作成自体には取り組んでいるものの)国内外の学会への参加・報告が当初の予定ほど実行できていないこと、Onlineでの論文のPDFファイルの購入が当初の予定を下回っていることなどが挙げられる。 この点を踏まえ本年度は、(1)指導教官や研究協力者との論文の打ち合わせや資料収集、学会・研究会への出席・発表の際の研究旅費、(2)Onlineでのファイル購入を含め、本研究に関連する経済学分野の図書、学内では購入していない専門誌や海外の研究叢書の購入、(3)本研究の成果と今後の課題に関する報告書の作成と配布などについて、研究費の使用を予定している。
|