2012 Fiscal Year Research-status Report
国際工程間分業と企業の異質性を考慮した直接投資モデルの構築、および実証分析
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23730249
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松浦 寿幸 慶應義塾大学, 産業研究所, 講師 (20456304)
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Keywords | 貿易自由化 / 経済政策 / 海外直接投資 / 生産性 |
Research Abstract |
本研究は、国際工程間分業と企業の異質性を考慮した海外直接投資モデルの構築、および企業マイクロデータを用いた実証分析により、途上国向け直接投資の決定要因を明らかにする。途上国向けの直接投資では、自国と外国の間の要素価格差や貿易自由化による貿易コストの変化が大きな影響をもたらすと考えられる。また、近年の研究では、企業間の生産性格差により、同一産業の企業であっても、国際化から得られる便益が異なることが指摘されている。本研究では、企業の異質性に注目して、近年増加する途上国向け直接投資の決定要因が、企業間でどのように異なるかを分析し、今後の日本企業の生産・立地パターン、および国内経済への影響を展望する。 本年度は、平成23年度より作成している、海外直接投資、および産業別国別の関税率のデータ・ベースを完成させ、実証分析を行った。アジア諸国における貿易自由化、すなわち関税率の低下により、FDIを開始する生産性水準、すなわちFDIの生産性カットオフ水準が低下する傾向にあるとの結果を得た。さらに、海外直接投資の目的に関するアンケート項目などを利用して、直接投資のタイプ分けを行い、関税率の変化とFDIの生産性カットオフの間にどのような関係があるかを分析した。その結果、理論仮説のとおり、工程間分業を伴うFDIで、生産性カットオフの低下が著しいことがわかった。その他の成果としては、平成23年度から進めている海外直接投資に関する企業レベルデータによる研究のサーベイを展望論文として取りまとめ、研究書の一章として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外直接投資と関税率のデータ・ベースが完成し、実証分析を開始した。中間的な成果をディスカッションペーパーとして取りまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、理論モデル・実証モデルの精緻化に取り組む。特に、直接投資のタイプわけの精緻化、あるいは海外生産の固定費、可変費用の特定を試みる。現状では、現地法人と本社の貿易関係の補足が十分でないため、被投資国の企業データの利用なども検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
必要データを共同研究者から提供してもらうことができたので、当初予定していた研究補助者によるデータ入力が不要になったことにより、48,326円を繰り越すことになった。次年度は、補助者によるデータ整備、および学会参加のための出張費にあてる予定である。
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