2011 Fiscal Year Research-status Report
居住貧困への政策的対応:住宅補助の制度設計に関する実証研究
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23730252
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Research Institution | The Institute for Research on Household Economics |
Principal Investigator |
水谷 徳子 公益財団法人家計経済研究所, その他部局等, 研究員 (60551075)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 住宅補助政策 / 家賃補助 / 住宅市場 / 政策評価 / 応用計量経済学 / マイクロデータ |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本の住宅補助の政策評価をおこなうために、民間賃貸住宅の供給の弾力性に着目し、(1) 家賃補助が制度の対象となる民間賃貸住宅の家賃そのものの上昇につながっているのか分析すること、(2) 公営住宅のクラウディング・アウト効果を定量的に計測することを目的とする。本年度は、上記研究目的のために研究実施計画をもとに、以下の研究をおこなった。(1) 分析対象として、大阪市新婚世帯向け家賃補助制度を選択し、研究を実施するためのデータベースの整備を進めた。具体的には、2008年より定期的に(月末に)ダウンロードしている家賃情報の入手作業を引き続きおこなった。また、対象とする大阪市の新婚世帯向け家賃補助制度は平成18年度に補助額の変更があり、その前後の影響を検証するため、2005年から2007年までの賃貸情報の資料を収集、複写し、入力作業を進めた。(2) Sinai and Waldfogel (2005) をベースモデルとして、住宅土地統計調査と国勢調査の市区町村別データを用いて、公営住宅の増加が居住世帯ありの総住宅数を1対1で増加させているのかという数量におけるクラウディング・アウト効果を推定した。その結果、公営の借家と公団・公社の借家では、総住宅ストックに与える影響が若干異なること、住宅の大きさが小さい市場でクラウディング・アウトは大きく、公的賃貸住宅に対する超過需要が大きい地域では、クラウディング・アウトが小さいことがわかった。また、新規に公的賃貸住宅を追加しても1人当たりの居住スペースの増加には反映していない可能性を示唆した。これらの結果は、論文にまとめ、査読付学術誌に投稿し、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) の研究については、研究成果を論文にまとめ、査読を経て学術誌に公刊することができ、当初の計画以上に研究が進捗しているといえる。(2) の研究については、分析に必要となるデータは紙媒体であり、ただちに統計ソフトで読み込める形にはなっていないため、データの入力・加工・整理をおこなう必要があった。この電子化・データ化は現在も作業中であり、計画をやや下回る内容で進行している。全体としては研究計画の概要に基づき研究を進めており、順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在取り組んでいる、大阪市の家賃情報のデータ化が速やかにおこなわれるように努める。また、構築されたデータをもとに、家賃補助の有効性に関して実証的に分析し、各種研究集会での研究発表とともに、論文を完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
対象としていた大阪市新婚世帯向け家賃補助制度の見直しが発表され、平成24年度から新規募集が停止されることとなった。当初の予定では、補助額の変更前後を分析の対象としていたが、平成24年度の新規募集停止というイベントは、当初の計画より格好の自然実験であると考えられる。このイベントに関する分析も加えるため、平成24年度以降の家賃情報の入手作業を引き続き進める必要がある。また、イベントのアナウンスのタイミングの他、家賃補助制度や住宅供給に関係する法規制や歴史的背景等の資料収集費用および複写費が必要となる。
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