2012 Fiscal Year Research-status Report
居住貧困への政策的対応:住宅補助の制度設計に関する実証研究
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23730252
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Research Institution | The Institute for Research on Household Economics |
Principal Investigator |
水谷 徳子 公益財団法人家計経済研究所, その他部局等, 研究員 (60551075)
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Keywords | 応用計量経済学 / 家賃補助 |
Research Abstract |
本研究は「家賃補助制度」や「公営住宅の供給」といった日本の住宅補助制度に関する実証研究をおこなうことを目的とする。家賃補助制度に関しては、具体的には、分析対象として大阪市新婚世帯向け家賃補助制度を選択し、制度の変更あるいは廃止が、民間賃貸住宅の家賃そのものに影響を与えているかを実証的に検討する。 平成23年度は、まずその予備研究として、公営住宅のクラウディング・アウト効果を定量的に計測し、論文にまとめ、査読を経て学術誌に公刊した。 平成24年度は、予備研究から得られた知見に加え、住宅市場や都市・地域経済学や社会保障、労働経済学など諸分野の文献整理をおこない、各分野の知見の網羅的なサーベイをおこなった。この過程で得られた知見を基に、住宅価格の変動による住宅資産の変化と家計行動、特に出生行動の関連に着目した研究を、パネルデータを用いておこない、論文「住宅価格の変化が出産に与える影響」としてまとめた。今後、研究の位置づけや意義、手法、解釈を再度検討しながら分析を深め、国際的学術誌へ投稿していく予定である。 さらに、平成24年度は、2008年より定期的に(月末に)ダウンロードしている大阪市の家賃情報の入手作業を引き続きおこない、データベースの整備を進めた。また、大阪市新婚世帯向け家賃補助制度の新規募集停止(平成24年度)と公社賃貸住宅新婚家賃補助制度創設に伴い、資料収集をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象としていた大阪市新婚世帯向け家賃補助制度の見直しが発表され、平成24年度から新規募集が停止されることとなった。当初の予定では、補助額の変更前後を分析の対象としていたが、平成24年度の新規募集停止というイベントは、当初の計画より格好の自然実験であると考えられる。 このイベントに関する分析も加えるため、平成24年度以降の家賃情報の入手作業を引き続き進めると同時に、資料収集をおこなう必要があった。 また、分析に必要となるデータの一部は紙媒体であり、ただちに統計ソフトで読み込める形にはなっていないため、データの入力・加工・整理をおこなう必要があった。この電子化・データ化は現在も作業中であり、計画をやや下回る内容で進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在取り組んでいる、大阪市の家賃情報のデータ化が速やかにおこなわれるように努める。 また、構築されたデータをもとに、家賃補助の有効性に関して実証的に分析し、各種研究集会での研究発表とともに、論文を完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大阪市新婚世帯向け家賃補助制度の廃止と大阪市住まい公社の公社賃貸住宅新婚家賃補助制度創設(平成24年12月)に関する分析も加えるため、平成24年度以降の家賃情報の入手作業を引き続き進める必要がある。 また、制度廃止(あるいは創設)といったイベントのアナウンスのタイミングの他、家賃補助制度や住宅供給に関係する法規制や歴史的背景等の資料収集費用および複写費が必要となる。
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