2011 Fiscal Year Research-status Report
国家貿易企業に関する貿易理論~民間業者参入と民営化の効果分析~
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23730253
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
都丸 善央 中京大学, 経済学部, 講師 (30453971)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 応用理論研究 |
Research Abstract |
本研究では、農産物の(1)貿易量コントロール、(2) 国内調達、(3) 国内販売、に関する排他的権利を有する国家貿易企業(State Trading Enterprise; STE)が持つ貿易政策効果を、政府が生産者利益に偏向的な社会厚生最大化を目的とする場合に焦点を当てて分析することを目指す。とりわけ、申請者がこれまで得ていた「政府はSTEを保有することによって、消費者からの税を財源として生産者に対する補助金を拠出することを偽装できる」という結論が、(i) 民間貿易業者参入の可能性、(ii) STEの民営化の可能性、を考慮することによってどのように変わるかについて検討することを目的とした。 しかし、各地での研究報告や学会報告の際、「政府がそもそもSTEを保有するのはなぜか?」「その理由が補助金政策を偽装できるというのは理論的根拠としては弱いのではないか」という指摘を受けた。そこで、まず、前年度ではこの問題点を解消することから研究を再出発することにした。具体的には、(i) STEの保有、(ii) 自由貿易、(iii) 最適関税政策という3つの選択肢がある中で、生産者利益に偏向する政府がSTE保有を選択するインセンティブを持ちうるかについて検討することにした。 得られた結論は、政府の偏向の度合いがあまりにも強くない限りにおいて、STE保有の方が自由貿易よりも政府にとって利益的であるということである。同時に、その偏向の度合いがあまりにも強くなく、かつ、STEを抱える輸入国の需要の価格弾力性が供給の価格弾力性よりも十分大きければ、やはり、STE保有の方が最適関税政策よりも利益的であることが示された。この結果は、過剰な生産者保護に走る先進国に比べて弱い生産者保護をしていると考えられる途上国において、政府はSTEを保有するインセンティブを強く持つということを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究実績の概要】で述べたように、前年度は本研究の基礎となる申請者のこれまでの成果の前提(政府はSTEを保有するインセンティブをそもそも持っているという前提)について再検討する必要に迫られた。そのため、前年度は当初予定していた研究計画に進むことができなかった。とはいえ、前年度に検討したことは次年度で行う予定の研究をより強固な理論にし、重要性の高いものにするという意味で必要不可欠なことであったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究実績の概要】で述べたように、前年度は申請者の基礎研究の前提をサポートすることに尽力した。本年度はこの修正された基礎研究をもとに、当初予定していた研究計画を遂行することとしたい。具体的には、民間貿易業者の参入を許すケースの拡張から始め、可能であれば、民営化への拡張へと進めたいと考えている。 これらの拡張から一定程度の成果が上がり次第、速やかに論文執筆へと進み、国内外での研究報告を経て国際学術雑誌への投稿を図りたい。それに並行して、修正された基礎研究を一流国際学術雑誌へと投稿する予定でいる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【現在までの達成】で述べたように、前年度は基礎研究を修正することに大きく時間を割いた。そのため、前年度は関連研究に関する文献収集や国内外での積極的な報告活動が行えなかった。今年度は、理論的拡張の根拠となる実例に詳しい文献を中心に、関連する研究書を収集していくつもりである。また、速やかに修正された基礎研究の拡張を済ませ、海外での学会報告や海外研究者との交流を積極的に進めたいとも考えている。 さらに、海外での報告で得られるコメントを即座に論文に反映(文章の入力もさることながら、追加的な計算も)させる必要がある。そのため、海外に出張する際には高性能なノートパソコンを持参することが欠かせない。そこで、本年度では、そうしたノートパソコンを購入するつもりでいる。
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Research Products
(2 results)