2012 Fiscal Year Research-status Report
国際共有資源の持続的利用に向けた協調的資源管理政策に関する理論分析
Project/Area Number |
23730257
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
寳多 康弘 南山大学, 総合政策学部, 准教授 (60327137)
|
Keywords | 再生可能資源 / 貿易利益 / 資源管理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、国際貿易がある下で、国際的に共有される再生可能資源の管理について、一般均衡モデルを用いて分析することである。一般均衡モデルを用いることで、市場間の相互作用を考慮に入れた分析が可能となる。特に水産資源については、経済発展を背景に需要が高まって貿易も活発であり、過剰利用による資源枯渇を回避するために、適切な資源管理が望まれている。また、水産資源の多くは、国際的に資源が共有されているので、政府間の国際協調も重要となる。国際貿易が資源管理に与える影響、その逆の資源管理が国際貿易に与える影響を考察している。 本年度は、研究期間の中間点に当たり、基礎的研究を固めて、研究最終年度の発展的研究に結びつけることを主目的に研究を行った。昨年度までに構築した資源管理が存在しない下での国際貿易の一般均衡モデルを基礎にして、資源管理を一般均衡モデルで扱いやすい形でモデル化する点に工夫を行い、基本的な分析枠組みを構築することができた。そして、最適な資源管理水準について、閉鎖経済および開放経済において基礎的な結果を導出することができた。 特に興味深い結果は、資源管理の下では、再生可能資源財の産業にレントが発生しているため、資源産業の規模が大きいほど、その国の所得が高くなる傾向にあることである。つまり、貿易の開始で、資源産業が輸出セクターとなる場合、レントが多くなり、国民所得が高くなるので、貿易利益を得やすいのである。 国内外の資源管理の実態を知るための資料などの調査を引き続き行った。国内外の学会・研究会に参加するなどして、分析の評価を受けるとともに、最新の研究動向も調査した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般均衡モデルで資源管理と貿易の影響を同時に分析することは、かなりの工夫が必要である。産出管理という生産量を直接、政府がコントロールする手法ではモデルをうまく解くことができないが、税率を使った適切な設定により、産出管理と同様の資源管理を分析できることが分かり、研究は大いに進んだ。しかし、資源管理の水準は各国の比較優位に影響を与えるため、資源管理と生産パターンとの関連について、より厳密な分析が必要であることが分かり、さらなる工夫が必要なことも分かった。
|
Strategy for Future Research Activity |
各国の政府による厚生最大化の結果、内生的に決まる資源管理水準と生産パターンについて、厳密な分析を行い、資源管理と生産パターンの関連性について結果を得る予定である。この結果を利用することで、国際的に資源管理の協調をする際の均衡について、考察することができる。国際貿易がある下で、資源管理の国際協調が実現可能かどうか、実現が困難な場合はどのような追加的な措置が必要かどうかを検討する。 研究内容をまとめて、国内外の学会や研究会で精力的に発表を行い、研究をブラッシュアップする。そして、海外の専門学術雑誌に投稿して研究の評価を受けるとともに、研究成果を公表して広く広めることを予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に繰り越す若干の研究費を、研究成果のとりまとめの印刷費用などに使用する。
|