2011 Fiscal Year Research-status Report
人口動態と財政経済の相互関係に関するシミュレーション分析
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23730270
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小黒 一正 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (90598153)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 人口内生 / OLGモデル / 子育て支援 / 財源 |
Research Abstract |
急速に少子高齢化が進む現状において、財政・社会保障の改革は喫緊の課題となっている。このような状況において、政府は、これまで財政・社会保障の改革を進めてきたが、最近は、将来の財政・社会保障の担い手を増やす観点から、子ども手当拡充や幼保一元化をはじめとする「子育て支援」等にも力を入れている。この関係で、本研究の目的は、人口内生OLGモデルの構築を行い、子育て支援の財源選択(例:消費税、賃金税、資本課税、年金給付の一部削減)や財政・社会保障の改革といった少子高齢化への対応策として想定できるいくつかの政策が、将来の人口動態や財政・経済をはじめ、各世代の効用に与える影響の定量的な把握を試みるというものであった。平成23年度においては、その試作版を構築するという計画であったが、そのベースとなるモデルを構築し、海外査読雑誌("Child Benefit and Fiscal Burden: OLG Model with Endogenous Fertility", Modern Economy, Volume 2, No.4, pp.602-613)に掲載を行った。この分析によると、公的債務(対GDP)が累増する中で、財政の持続可能性を維持する観点から、消費税のみを増税する政策よりも、消費増税と子育て支援の拡充をセットで行う改革の方が、現役世代および将来世代の効用を改善する可能性があることが分かった。なお、本研究の分析に利用するモデルも徐々に完成しつつある。モデルの頑健性について十分な検証が必要であることはいうまでもないが、タイムリーな公表を促す観点から、その試算結果を国内雑誌(「子育て支援の財源選択と世代間効用-人口内生OLGモデルの視点から-」季刊個人金融 vol 6, No.1, pp.50-63)に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」でも記載したように、平成23年度においては、人口内生OLGモデルの試作版を構築するという計画であったが、そのベースとなるモデルを構築し、海外査読雑誌("Child Benefit and Fiscal Burden: OLG Model with Endogenous Fertility", Modern Economy, Volume 2, No.4, pp.602-613)に掲載を行った。また、本研究の分析に利用するモデルも徐々に完成しつつある。モデルの頑健性について十分な検証が必要であることはいうまでもないが、タイムリーな公表を促す観点から、その試算結果を国内雑誌(「子育て支援の財源選択と世代間効用-人口内生OLGモデルの視点から-」季刊個人金融 vol 6, No.1, pp.50-63)に掲載した。なお、本研究計画では、「必要に応じて政治システムとこれら財政経済や人口動態との関係についても分析を深める」としていたが、その分析の一部について、査読雑誌("Demographic Change, Intergenerational Altruism, and Fiscal Policy - A Political Economy Approach -", Studies in Applied Economics, Volume 6)に投稿を行い、その掲載(予定)が決まった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、当初の研究計画のとおり、現在構築中のモデルを完成させる。その上で、子育て支援の財源選択(例:消費税、賃金税、資本課税、年金給付の一部削減)や財政・社会保障の改革(例:消費税の引上げ、年金給付の削減、年金保険料の一部の消費税化)が、将来の人口動態などに与える影響の分析を行う。その上で、できる限り、現実の問題意識に近い政策シナリオの設定とそのシミュレーション分析や、その結果の考察を行い、論文を完成させる。その後、これらシミュレーション分析の結果に基づき、まずは、本研究をディスカッションペーパーといった形で取りまとめ、学会・研究会等で報告後、論文を完成させる。また、必要に応じて、引き続き、政治システムが財政経済や人口動態に与える影響を分析するため、その理論モデルの構築も試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に支出を予定していた英文校閲について、経費の効果的な使用を行ったところ、当初予定額を実支出額が下回ったために発生した次年度使用額121,068円は、平成24年度の研究遂行に必要な図書の購入に利用する予定である。また、平成24年度は、上記の研究を推進するため、必要に応じてデータセットの更新、関連書籍・先行研究の調査を行うとともに、研究成果の取りまとめと学会等での研究成果発表等を行う予定であり、そのために研究費を利用する予定である。また、海外査読雑誌等への投稿のための英文校閲などに研究費を利用する予定である。
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