2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730271
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
鈴木 綾 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (20537138)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 経済政策 / ミクロ経済分析 / 産業発展 / 貧困削減 / リスク / アフリカ / ガーナ |
Research Abstract |
本研究では、貧困削減の一助となるとして注目を集める付加価値の高い輸出園芸産業の一例として、ガーナのパイナップル産業を事例に調査をしている。2007年に行った調査では、同市場に零細農家が参入するためにはリスク分散能力が重要であることが判明した。しかし、2007年にはリスク選好に関する調査は行わなかったため、2010年度に再度現地を訪れ、ガーナ大学統計社会経済研究所の協力を得て、前回調査を行った農家約250世帯に対してインタビューとリスク選好を計測するための簡単な実験を行った。現在このデータを分析中である。また、前回調査時以降に輸出先のEU市場で起こった変化を受け、ガーナの生産者レベルで市場がどう変化してきたのかを知るため、政府担当者、輸出業者協会、加工業者協会や個別の輸出業者を訪れ、ヒアリングを行った。明らかになったのは、同産業における大規模生産者の役割は増しており、全輸出量のうち零細農家が生産した果実の割合は以前の30%から5%ほどまでに激減していることである。これには、資本集約的な新品種へ移行できなかった零細農家が多くいること、また食品規制強化により、輸出業者にとって自社の大規模農地での栽培に比べて、多くの零細農家から果実を購入する利点が減ったことなどがある。輸出業者数は減っているが、生き残った会社の規模は拡大傾向にある。一方で、国内の加工産業は以前よりも発達しており、加工業者協会が組織化され、ジュースなどの加工品をあちこちで見かけるようになった。加工業は、零細農家が供給できる市場を増やし、輸出産業における零細農家の役割の衰退を補っていた。グローバル市場の変化が途上国の生産者ほかのアクターにどのような影響を与えているのか、その具体例としてある産業の変容を数年にわたって観察できたことは、非常に意義深い。集めた情報をもとに、丁寧に研究論文をまとめて広く公表していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、研究初年度で現地調査を行い、分析に必要なデータを収集することができた。また、現在そのデータを分析中であるので、達成度は良好だと思われれる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度(H23年度)に現地調査で集めた情報とデータをもとに、分析を行い、学術論文を執筆する。ガーナ・パイナップル産業の変容を記述的に丁寧に説明する内容とともに、パイナップル生産農家と非生産農家のリスク選好の違いや、現在でもパイナップル生産農家として(あるいは契約農家として)生き残っている農家と、パイナップル生産をやめてしまった農家の違いなどにつき、計量経済学の手法を用いて量的にも分析する予定である。論文完成時には、国際的な学会で報告できるように応募し、学術誌への投稿も行う。さらに、完成論文はガーナの政策担当者にも送り情報共有を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度の研究費は、執筆した論文を発表するために国際的な学会へ参加する際に必要な旅費に充てる計画である。
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