2011 Fiscal Year Research-status Report
中期的な時間軸に基づく安全・安心な食の流通のための情報公開制度設計
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23730276
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青木 恵子 大阪大学, 社会経済研究所, 特任助教 (10546732)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 食品の安全性 / 実験 / 調査 |
Research Abstract |
平成23年度に実施予定の第1の課題「消費者が信頼を寄せる情報の検証」では、本実験を実施する前に、本実験の結果を予測できるプレテストを行った。ここでは、食品と一番関連しづらい、環境面の指標を用いた場合を実施した。実験では、計画にある牛肉に比べて日本人が一番なじみのある果物であり、また扱いが容易であるみかんを用いた。そして、212人の学生と一般人に、固定報酬の仮想環境のもとで、価格と生産から店頭に並ぶまでに排出された二酸化炭素量を属性からなるチョイスメッソドを用いて、12回みかんを選んでもらった。実験の結果、食品を対象とした時も、一般的に環境意識の高い人は低い人に比べて二酸化炭素削減への価値は高かった。この結果は、食品偽装事件を想定した場合も、食品に対する消費者への意思決定に環境指標を用いる場合は、環境意識も測定する必要性を示唆している。また、同様の内容を実際に買う購買実験結果と比較すると、まず、仮想環境の支払意志額のほうが購買実験よりも高い仮想バイアスにならなかった。しかし、どちらの場合も、環境意識の高い人の方が低い人に比べて二酸化炭素削減への価値の高さを示した。これらの結果より、仮想バイアスの存在を想定した本実験の実験デザインを実施するフィールド実験とアンケート調査のデザインの再検証を進めている。 次に、課題2の「生産者の安全確保努力の動学的検証」のための理論モデルでは、計画同様、質が異なる2種類の食品(高給食品・普通食品)が存在する市場において、消費者と生産者の両者の努力によって食中毒が決まる確率と高給食品の場合のほうが、努力コストが高くなる設定をそれぞれで行った。現在、証明検証を進めるのと同時に、実験デザインのための数値例を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年に実施予定の課題1「消費者が信頼を寄せる情報の検証」はプレテストの結果を考慮し、本実験のフィールド実験の報酬支払や食材等の実験デザインの変更が生まれた。課題1は、本実験前のプレテストを実施し、その結果を反映させた実験デザインの改訂を終え、平成24年度に実験できる準備を行っていることから、全体的なスケジュールの流れにおいては、予定の範囲内である。 課題2の「生産者の安全確保努力の動学的検証」のための理論モデルでは、計画同様、理論モデルを構築し、証明検証と同時に、実験準備中である。概ね計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、課題1の再デザインでフィールド実験とアンケート調査を実施する。また、課題2の理論モデルを実験ベースにするための数値例を作る。そして、平成24年度に実施予定の課題3「風評被害を抑止する効率的な情報公開制度設計」の市場実験である。ここでは、課題1で検証された消費者にとって信用しやすい情報を、課題2で構築したモデルによる市場環境の中で、学生や一般人を対象として実験を行う。課題1で提供予定の情報の提供方法は、(1)Cason and Gangadharan (2002)が用いた第三者認証機関による場合、(2)生産者の顔も公開する、(3) List and Sinda(2004)とCarlsson et al. (2005)のチープトーク研究を発展させて、消費者同士が与えられた情報に対して話すことができる場合、(4)与えられる情報の生産過程にかかわる場合、の4つを想定している。実施期間は食中毒の発生が高い月とそうでない月のそれぞれ1ヶ月を想定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、課題1の本実験の使用計画は、実験被験者謝金81万円(90人×1500円(税込)/時×1.5時間×2週間×2ヶ月)、補助者謝金7.6万円(2人×950円/時×2時間×5日間×2週間×2ヶ月)、そして食材、および施設費等で約4万を予定している。インターネットアンケートは96万円(回収300サンプル:約24万円×4回)の支出予定である。 次に、課題3の被験者謝金36万円(10人×1500円(税込)/時×1.5時間×4回×2市場×2ヶ月)、補助者謝金3.04万円(1人×950円/時×2時間×4回×2市場×2ヶ月)、そして食材、および施設費等で3万をそれぞれ支出予定している。そして、これらの結果を発表する、学会費は、約8万円を支出予定である。
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