2013 Fiscal Year Research-status Report
特許付与前情報提供制度の利用と効果に関する実証分析
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23730278
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 健太 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70507201)
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Keywords | 特許付与前情報提供制度 / 審判制度 |
Research Abstract |
1990 年以降に出願された特許に対して請求された無効審判を分析対象として、特許付与前情報提供制度など特許の安定性に寄与する要因を実証的に明らかにすることを目指した。具体的には、審査段階及び審判段階の手続き経緯に着目し、回帰分析の手法で無効審判の成立要因を推定し、安定的な権利形成に貢献する諸要因を探った。順序ロジット及びロジット・モデルによる推定の結果、以下の結果を得た。 審査段階の手続き経緯では、付与前情報提供及び審査段階での面接の回数は、無効確率に対して有意な効果を持たなかった。前者は、審査段階で審査官が利用可能な情報の量を増やす効果や、また、特許庁内部での審査資源をより重要な発明を含む出願に集中的に投下する効果を持つと推測されるため、審査の質を高めると予見された。しかし、無効審判の結果をもって権利の安定性や審査の質を評価した場合、予想した効果は検出されなかった。面接については、出願人と審査官との発明に関する情報の非対称性を縮小し、そのことが審査の質を高めると考えたが、同様に効果は確認できなかった。一方、検索の外注が安定的な権利の形成に寄与していることも確認された。さらに、近年では、早期審査の対象になった特許において無効が成立する確率が高いことも明らかになった。これは、早期に審査請求された場合、第三者が情報提供を行う機会が制限されることや、直近の研究成果については、審査官の先行技術情報へのアクセスが比較的困難であるため、審査の質の低下を招いている可能性が示唆される。この他、補正回数が無効確率を低下させること、拒絶理由通知の回数が無効確率を上昇させることも確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに実施した多面的な実証分析の中で、付与前情報提供制度の利用と特許権の安定性の関係をかなりの部分理解することができた。したがって、当初の目標はおおむね達成できたと考えているが、情報提供の効果は、不服審判に対する効果と、無効審判に対する効果で異なることが示されるなど、一連の分析結果を統合的に解釈するためのロジックを構築すべく、さらなる検討が必要であることも明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究から得られた政策的含意をより明確にして研究成果の社会的な還元を目指すとともに、今後の研究課題などを探求していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年12月に開催されたAsia-Pacific Innovation Conferenceにおいて、本研究成果の一部が報告され、有益なコメントを得た。コメントに対応すべく分析の追加、論文の修正を行うこととしたため、英文校閲費の未使用が生じた。 論文修正後の英文校閲に未使用額を充てる。
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