2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730290
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
山口 雅生 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (50511002)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 最低賃金 |
Research Abstract |
本研究の目的は、最低賃金とマクロ経済の雇用、賃金、格差、物価上昇率などの関係を理論モデルを用いて考察するとともに、最低賃金の引き上げによる、1990年代以降の経済全体の雇用、産業別、企業規模別、年齢別、性別などの雇用に対する増減効果や貧困削減効果について、分析することである。 2011年度は、理論面、実証面の両方から研究を行った。理論的な研究では、Melitz(2003)などの企業の異質性を考慮したモデルに、最低賃金や賃金格差を導入するモデルを構築した。しかし変数が多すぎてモデルが複雑になったため、明示的な計算結果が導けていない。そのため政策的含意を引き出すまでこともできていない。 実証的な研究では、賃金分布に関する研究を主に進めた。賃金格差水準や賃金格差変動についての簡単な要因分解の分析手法を開発した。また1992年、1997年、2002年の『就業構造基本調査』の匿名データを用いて、企業規模別の賃金分布について調べた。従業員数10人未満の小企業においては、男女ともに賃金格差の水準が大きくなっていること、また非正規雇用者割合が、従業員数10人以上の企業よりも大きくなっていることが影響していることが分かった。さらに、企業規模が大きくなるにつれて、1992年から2002年にかけての賃金格差の拡大の規模が大きくなっており、その要因が非正規雇用比率増加の規模が企業規模が大きな企業ほど大きくなっていることが分かった。今後、最低賃金が、賃金分布や貧困にどのように影響しているのかを、詳しくみていくことは課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論的な研究では、Melitz (2003)の企業の異質性を考慮したモデルに、最低賃金や賃金格差を導入するモデルを構築したが、あまりにも複雑すぎて、政策的な含意を導くことができていない。当初の目的を達成するには、研究が遅れている。モデルをもっと単純化して、政策的な含意を引き出せるモデルを構築することに重点をおいたほうがよいのかもしれない。 また実証的な研究では、企業規模別の賃金分布の研究を進めることができたが、まだ最低賃金の影響については分析できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
理論面では、Melitz (2003)の企業の異質性を考慮したモデルに、最低賃金や賃金分布を導入するモデルの構築を目指す。ただし、より単純な形でのモデル構築を行う予定である。同時に、物価、GDP、失業率と最低賃金の関係を分析できるマクロモデルの構築も行う予定である。 実証面では、賃金分布を詳細に調べていくとともに、最低賃金が影響しているかどうかを分析していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は2007年の『就業構造基本調査』の匿名データが公表される予定であり、その取得のための費用、データ作成のためのアルバイト費用などに、研究費を使用する計画である。また文献研究のための図書の購入も計画している。さらに膨大なデータを分析するにあたって業務の効率化を図るため、パソコン機材を購入する計画である。 最低賃金や賃金分布の国際比較を行うための海外調査や、研究発表のための旅費の使用も計画している。執筆した論文を英語で発表するための英文校正費用も計画している。
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