2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730290
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
山口 雅生 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (50511002)
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Keywords | 最低賃金 / 雇用 / 失業 / 消費 / 需要不足 / 賃金分布 |
Research Abstract |
平成25年度は最低賃金の引き上げが雇用や失業に与える影響について、動学的一般均衡モデルを用いて分析を行い、それをワーキングペーパー「Can a minimum wage hike decrease an unemployment rate?」Osaka University of Economics Working Paper Seriesにまとめ、平成26年4月に2014 Annual Meeting The Korean Association of Applied Economicsで発表した。そこでのコメントを踏まえながら、現在外国雑誌に投稿準備を進めている。本研究では、経済が需要不足に陥っていれば、最低賃金の引き上げが消費を増やし需要不足を解消し、雇用や経済厚生に正の影響を及ぼすことを示した。一方、経済が需要不足に陥っていなければ最低賃金の引き上げは雇用や経済厚生を悪化させることも示した。 これまで最低賃金の上昇が失業を減らす可能性についての理論研究には、労働力の買手独占モデル(Manning 2003)、サーチモデル(Flinn 2006)、効率賃金モデル (Rebitzer and Taylor 1995)などがあるが、雇用を増やして需要不足を解消に役立つという理論モデルは先行研究にはない。 今後景気の回復とともに一時的に賃上げが実現される可能性はあるが、長期的には財政再建のための増税・歳出削減や人口減少などが影響し経済成長が期待できず、企業が賃上げに慎重になるかもしれない。その際、経済が需要不足に陥っていれば、政府は歳出を増やすことなく、最低賃金の引き上げによって、需要不足の解消に役立つ政策が実施できることを、本研究の理論は示している。 他方実証的な研究として、厚生労働省より提供されている『賃金構造基本統計調査』の個票データを用いて、最低賃金の引き上げが賃金分布にどのような影響を与えているのか、分析している。平成26年度以降引き続き『最低賃金が雇用、失業、経済成長、経済厚生に与える影響』の研究プロジェクトにおいて、この研究をさらに進める予定である。
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