2013 Fiscal Year Research-status Report
我が国におけるエンド・オブ・ライフ・ケアの経済学的分析
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23730291
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
石川 路子 (伊藤 路子) 甲南大学, 経済学部, 准教授 (10379464)
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Keywords | 医療・介護 / クオリティ・オブ・ライフ / エンド・オブ・ライフ・ケア / 社会資本 / 国際情報交換 / オランダ・アムステルダム |
Research Abstract |
本研究の最終目標は我が国独自のエンド・オブ・ライフ・ケア・プログラムを構築・提言することにある。本年度は、終末期まで見据えた在宅における介護・看護・医療ケアのコストを経済学的に分析・評価したうえで、在宅ケアへのインセンティブを阻害する要因を明らかにし、より具体的な政策提言を行う。平成25年度においては、当初の予定通り、在宅介護・医療ケアにかかる分析を継続的に実施している。この目的を適切かつ着実に達成するために、平成25年9月1日よりオランダ・アムステルダムにあるVrije Universiteitの空間経済学科に所属するPeter Nijkamp教授と共同で研究を遂行している。具体的には、現在、都市空間におけるQuality of Lifeの差異の要因に関する2つの研究を同時並行的に実施している。第1の研究では、Quality of Lifeが人的資本(Human capital)のみならず社会資本(Social capital)にも大きく影響を受けていること、さらに都市環境といった空間的環境にも大きく依存していることを明らかとした。第2の研究では日本のデータを用い、2006年から日本で導入された「在宅医療支援診療所」が高齢者のQuality of Lifeに与える効果を計測している。具体的には、この新制度は高齢者の死亡率を統計的に有意に下げる効果を持っていることを明らかにしている。なお、この研究成果は5月末にタイ・アユタヤで開催されるRSAI(The Regional Science Association International)の第10回世界大会での特別セッションにて発表される予定である。今後はNijkamp教授との新たな共同研究を進めると同時に、当該研究の最終目標に向けて継続的かつ計画的に研究を遂行していく所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本来、本研究は平成25年度を最終年度としたものであったが、平成25年9月1日よりオランダ・アムステルダムにあるVrije UniversiteitのPeter Nijkamp教授との共同研究の機を得て、より完成度の高い研究成果を目指し、継続的かつ計画的な研究を遂行している。都市・地域研究で多大な成果を挙げているNijkamp教授との共同研究により新たな知見を得たことで、欧米諸国と日本とのQuality of Lifeに対する研究進度の違いを知ると同時に、今後のQuality of Life研究に対する考え方を整理することができるなど、今後の研究を大きく飛躍させることができる可能性を身につけることができたと自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本研究の補助事業期間延長の承認をいただいたことで、Nijkamp教授との新たな共同研究を通じて、今年度末の成果報告に向けて着実に研究を重ねていく所存である。現時点でNijkamp教授ほかVrije Universiteitに所属する他の研究者との新たな共同研究を2件予定しており、その研究に向けて現在共同研究者と調整中である。具体的にはMeta analysisを用いたQuality of Lifeの要因分析、さらに具体的な都市のデータを用い、よりミクロな観点からQuality of Lifeの研究を行う予定である。いずれの研究も当該助成研究の目的に合致したものである。なお、帰国後(9月1日以降)は、公開講義等の機を利用し、この成果を広く一般に公開すると同時に、市民や実務家等との様々な意見交換を通じて、より具体的な研究成果を得る所存である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該助成期間中、申請者は、平成25年9月1日~平成26年8月31日までオランダ・アムステルダムにあるVrije Universiteitにて在外研究を行っている。ここでの共同研究は、より専門的・高度な知見を深めるものであると同時にこれまでの研究成果をより充実させるものである。このため、平成25年度での助成金を最終年度にあたる平成26年度の研究費として充当する予定である。 研究費の一部は、当該研究成果の発表を目的に平成26年5月26~30日にタイ・アユタヤで開催される第10回RSAI世界大会への参加にかかる渡航費および参加費に充当する予定であった。しかしながら、5月22日タイでのクーデター宣言を受け、当大会が開催中止となった。このため、研究費の一部を渡航費および宿泊費のキャンセル料に充当したい。なお、研究成果は9月以降国内での学会で発表するものとし、その発表にかかる費用を残余の研究費から充当するものとする。さらに、在外期間中の当該研究に関連する資料収集・物品にかかる費用、共同研究者との打ち合わせ等にかかる費用に充てる予定である。
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