2014 Fiscal Year Annual Research Report
我が国におけるエンド・オブ・ライフ・ケアの経済学的分析
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23730291
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
石川 路子(伊藤路子) 甲南大学, 経済学部, 准教授 (10379464)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | QoL / 医療・介護 / 地域格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は我が国独自のエンド・オブ・ライフ・ケア・プログラムを構築・提言することにある。研究最終年度である2014年度には、この目標を達成する3つの論文を執筆した。第1の研究は、生活の質(Quality of Life、以下QoL)が、人的資本(Human Capital)のみならず、社会資本、や都市環境にも大きく影響を受けていることを明らかにしたものである。具体的には、医療ケアのコストは、個人の所得状況や生活習慣など個人属性に依存したファクターだけではなく、その個人が置かれている物理的な環境(都市/郊外、医療機関へのアクセシビリティ、住宅環境など)、や社会的環境(いわゆるソーシャルキャピタル)などに依存することが明らかとなった。第2の研究は、日本の都道府県のデータを用い、2006年から日本で導入された「在宅医療支援診療所」が高齢者のQoLに与える効果を計測したものである。具体的には、都道府県の医療ケア格差が非常に大きいことを明らかにしたとともに、在宅医療支援診療所システムの導入が高齢者の死亡率を統計的に有意に下げる効果を持っていることを実証している。さらに第3の論文では、メタアナリシス(Meta-analysis)という分析手法を用いて、都市環境が人々のQoLに与える影響を分析した。本論文では、これまでの研究で明らかにされてこなかった都市/郊外といった空間的環境が人々のQoLに与える影響は大きく、環境的要因の改善が医療ケアのコスト低減につながることを明らかにしている。この一連の研究では、長寿社会が必ずしも医療・介護コストを押し上げるものにつながるのではなく、環境要因を含めた人々のQoLが医療・介護コストに大きく影響することが明らかとなった。
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