2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730298
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
新居 理有 広島大学, 社会(科)学研究科, 特任助教 (70590462)
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Keywords | 財政の維持可能性 / 財政の持続可能性 / 公債 / 財政政策 / 経済成長 / 金融市場の不完全性 |
Research Abstract |
平成24年度においては,昨年度に分析を実施した,日本において維持可能な基礎的財政赤字の規模に関する定量的な評価を論文として取りまとめ,京都大学経済研究所および財務省財務総合政策研究所のディスカッションペーパとして公表した.またこの結果を国際学会,国内学会および研究会にて発表し,分析手法や結論に関する議論を行った.本論文は現在査読付き国際学術雑誌に投稿中である.しかし昨年度から進めている研究は移行過程が考慮されていないため,財政が維持可能となるための基礎的財政収支に関する必要条件のみの分析に留まっており,現時点の公債残高対GDP比率をも考慮した分析には至っていない.そのため,現在は簡単な世代重複モデルを用いて移行過程の数値計算を行うことで,現時点の公債残高/GDP比率を考慮した上で維持可能となる財政政策の定量的分析を進めている最中である.さらに,多世代の家計からなる世代重複モデルを用いた移行過程の計算についても,その方法を検討している最中である. さらに,金融市場の不完全性が存在する経済において,公債発行と経済成長の関係を再検討する研究も並行して進めている.金融市場が不完全な場合には,公債残高/GDP比率が低い状況においては公債発行が経済成長を促進し得ることを,モデルの定性的分析を通じて明らかにした.これは近年の公債残高と経済成長に関する実証研究と整合的な結果となっている.この結果は,財政が維持可能となるための条件自体に大きな影響を与え得るため,どの程度の影響を与えるかを検討する必要があると考える.本研究は今後,国際学会・国内学会などでの研究発表ならびに査読付き国際学術雑誌への投稿を進めていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一年目の研究内容の公開,学会等での報告ならびに査読付き雑誌への投稿を計画通り実施しているとともに,次段階の分析についても既に進めている.以上のことから研究計画として挙げた内容は順調に遂行している.これに加えて,金融市場の不完全性が公債発行と経済成長の関係に与える影響についても研究を進めることができ,財政の維持可能性を検討する上で新たな論点を発見することができた.以上のことから,進捗状況は計画以上に進展していると結論づけられる.
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で論文へ取りまとめた研究内容について,国際学会・国内学会への応募,発表を進めていく.また初期時点の公債残高に関する条件の分析に関する内容を早急に論文として取りまとめ,学術雑誌への投稿を目指す.さらに,多世代の家計からなる世代重複モデルを用いた初期時点の公債残高に関する条件の検討についても,モデルの構築ならびに定量的分析を進めていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に次年度使用額が発生したため,このうちの一部が平成25年度に持ち越される形となった.平成24年度の研究発表に伴う旅費の一部が発表先から支出されたことなどにより,旅費使用額が少なくなったことが理由として挙げられる. これらの次年度使用額は平成25年度請求額と合わせて,国際学会での研究成果の公表や,予定以上に進んだ研究の成果公表・発信にかかる経費のために使用する予定である.また本研究計画においてより豊かな結果を得るため,財政政策やマクロ経済に関する最新の研究成果の取材や,外部の研究者を招聘しての研究会開催のための経費にも使用することも予定している.
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Research Products
(5 results)