2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730298
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
新居 理有 広島大学, 社会(科)学研究科, 特任助教 (70590462)
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Keywords | 財政の維持可能性 / 日本財政 / マクロ経済 / 公債 |
Research Abstract |
平成25年度は,日本経済において,維持可能となる財政政策について定量的な分析を行った.2世代重複モデルを用い現在の日本経済を想定した設定の下で数値計算を行った結果,現在の日本の政府債務残高からもっと低く抑える必要があること,現在の政府債務残高を想定すると,非常に大きな基礎的財政収支の改善が必要であること,を分析結果として得た.また平成25年度において,金融市場が不完全な状況では,公債残高と経済成長の間に非単調な関係が生まれる可能性があることを,理論モデルの分析を通じて明らかにした. 本研究計画を通じて,日本経済を想定したモデルをもとにした定量的分析により,以下の二点の結果を得た.第一に,基礎的財政赤字を維持し続けるには非常に高い経済成長率(ベンチマークの分析では6%程度以上)を保ち続ける必要があり,現実には基礎的財政収支の改善が財政の維持可能性の達成のために必要と考えられる.第二に,2世代重複モデルを用いた定量的分析では,公債残高を大きく削減しない限り,財政の維持可能性が実現できないことが示唆される.例えば,現在の公債残高を初期条件とした場合,非常に大きな基礎的財政黒字(ベンチマークの分析ではGDPの10%以上の黒字)が財政の維持可能性を達成するために必要である. また本研究計画において,政府支出が生産性を上昇させる効果を持つ状況や,金融市場が不完全な状況での公債政策の効果を,理論モデルを用いて分析した.これらの状況を想定すると,公債政策とマクロ経済の間に新たな効果が生まれ得るため,維持可能な財政政策を考える上でこれらの状況を踏まえつつ分析を進める必要があることも明らかにできた. 今後は,多世代重複モデルを用いた日本財政の維持可能性に関する定量的な分析に継続して取り組む.その際には,上述の理論的成果も取り入れた上での定量的分析についてもあわせて検討する.
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Research Products
(5 results)