2011 Fiscal Year Research-status Report
アナリスト予想に基づく株式リターン・リスクの時系列モデルへの適用
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23730305
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
森田 充 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 助教 (30453492)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ファイナンス / アナリスト予想 / 業績予想 / ボラティリティ / 時系列モデル |
Research Abstract |
本研究は、個別アナリストの業績予想の平均(コンセンサス)と個別アナリストごと予想の散らばりで評価したリスクを主観的な株式の期待リターンとリスクと捉えて、それを、従来展開されているヒストリカルな株価データに基づく時系列モデルに対して適用することを目的にしている。アナリストの業績予想の散らばりの度合いは、対象企業のリスクテイクの度合いに紐付いた業績の不確実性や業績予想の難しさによる要因と企業のディスクロージャーの度合いによる要因があると考えられる。今年度は、研究計画に従い、2006年から2010年までのアナリストの業績予想のデータベースをもとに、実績の業績データや株価データ、ディスクロージャー評価など追加的なデータベースを加えて分析可能な形でのデータベースの構築を行った。アナリストの業績予想のばらつきを計測するためには複数名アナリストがカバーしていなければならないが、目標株価を5名以上カバーしている企業は200社前後であり、規模が比較的大きな企業である。したがって、時系列データを構築しうるユニバースとして日経平均株価指数採用銘柄のなかでアナリストカバーが5名以上の銘柄群で分析を進めることにした。まずは、目標株価のコンセンサスとその時点における株価から将来の主観的な期待リターンおよび、目標株価の標準偏差に基づくリスクを計測した。さらに、予備的検証として単純集計により業績予想のばらつきの過去の業績変動との関連性や業績予想の困難さによるセクター間の差異を明らかにし、主観的リスク指標としての妥当性を確認した。また目標株価のコンセンサスとアナリストごとのばらつきにもとづく主観的な期待リターンと主観的なリスクとの関連性を計測したが、アナリストごとのばらつきが高いほど主観的期待リターンが高いことが分かった。これらの分析を元に数社、主観的リターンとリスクを取り込んだ時系列モデルの構築を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付決定額について慎重な執行が求められるなかで、研究費の大部分を占めるデータベースの購入が比較的遅れたが、最も時間がかかると考えられたデータベースの構築は概ね順調に進んだ。ただし、学会の口頭報告、論文執筆のタイムスケジュールまでに分析が進まなかったためタイミングを逃した点は反省点であり、今年度、研究成果の報告を行なっていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、アナリスト予想による主観的なリターン・リスクを取り込む形での時系列モデルの構築について試作を試みたが単一資産モデルにとどまり、多資産までの拡張まで進まなかった。したがって十分にモデルを構築したとは言えないため、さらに今年度も分析を進める。 できるだけ早い段階でモデルの構築を終了させ、構築したモデルと株価情報のヒストリカルデータのみに基づく時系列モデルとの予測精度の比較を行う。また、構築したモデルをファイナンスの各種トピックスへ適用を図る。 具体的にはVaRなどリスク指標の計測や、構築したモデルに基づくポートフォリオのアロケーションを行ったものと、これまでの株価のヒストリカルデータのみに基づくアロケーションとの間でバックテストによる運用成績の比較を行いたい。 本研究ではアナリストの業績予想と株式リターン・リスクの関係を明らかにすることを中心に研究を進めているが、業績予想のばらつき(主観的リスク)に影響を及ぼす要因について追加的に分析を行いたい。前年度の研究の成果はJAFEEでの口頭発表を行いたい。また今年度実施する追加的な分析を含めて今年度中に査読付きジャーナルへの投稿を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は、震災の影響で当初交付決定額の7割が支給され慎重な執行が求められるなか、研究費支出の大部分を占めるデータベースの購入に際して、早期に購入しデータベースの構築を優先するため、計画当初よりも比較的短期間分(2006年から2010年分、2006年から2007年分は月次データ、2008年から2010年は日次データ)を購入せざるを得ない状況であった。 次年度は、データ期間を延長し分析結果の頑健性を高めるため、データベースの追加購入に15万円程度を計画している。また今年度はデータ整理加工に比較的ノウハウの蓄積が必要だったため、申請者単独でデータベースの整理を行った。次年度は追加データの整理のためのノウハウも蓄積したためアルバイトに必要な指示を出すことも容易な環境になったと考えられるため、アルバイト費を5万円程度支出する予定である。 研究成果発表のための出張旅費には10万円程度、また英文での論文校正費に10万円程度を予定し、その他諸経費として5万円を予定している。
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