2012 Fiscal Year Research-status Report
非線形性と定常状態の変化を考慮したDSGEモデルの構築
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23730306
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
廣瀬 康生 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (50583663)
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Keywords | 動学的一般均衡モデル |
Research Abstract |
24年度中は、まず、昨年度に初稿を作成した論文「Identifying News Shocks with Forecast Data」(黒住卓司氏との共著)を学術雑誌へ投稿することを展望し、国内外でのコンファレンス、ワークショップ、セミナーで報告した。特に、International Conference on Computing in Economics and FinanceとRoyal Economic Society Annual Conferenceでは、論文の改訂に向けて有益なコメントを数多く頂いた。 次に、名目金利の非負制約を考慮した非線形モデルの解法についての研究を進めた。これに関しては、Laseen and Svensson (2011)の予期された金融政策ショックを加えることによって一定の金利パスを表現する方法を応用し、予期された金融引き締めショックを用いて名目金利の非負制約を表現することに成功した。この解法を用いて、論文「Interest-Rate Lower Bound and Parameter Bias in an Estimated DSGE Model」(井上篤氏との共著)の草稿を作成した。同論文では、名目金利の非負制約を考慮したモデルの解をdata generating process (DGP)とみなし、そのDGPから生成されたデータを用いて名目金利の非負制約を考慮せずにモデルのパラメータ推定を行った場合に、推定値にどのようなバイアスが発生するのかを調べた。分析の結果、実質利子率の定常値や金融政策ルールに関するパラメータにある程度のバイアスが発生するものの、他のディープ・パラメータへの影響は小さいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
経済変数の定常状態およびトレンドの変化を動学的一般均衡モデルに取り込む研究は、昨年度作成した2本の論文のうち、「Changes in the Federal Reserve Communication Strategy: A Structural Investigation」(黒住卓司氏との共著)は学術雑誌に投稿中であり、「Identifying News Shocks with Forecast Data」(黒住卓司氏との共著)もコメントを反映後、近日中に投稿予定であることに鑑みると、十分に進捗していると言える。 モデルの非線形性(特に、名目金利の非負制約)を考慮した動学的一般均衡モデルの構築についても、予期された金融引き締めショックを用いて名目金利の非負制約を表現することに成功しており、この解法を応用した論文「Interest-Rate Lower Bound and Parameter Bias in an Estimated DSGE Model」(井上篤氏との共著)も草稿が出来上がっていることから、十分に進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
経済変数の定常状態およびトレンドの変化を動学的一般均衡モデルに取り込む研究については、「Identifying News Shocks with Forecast Data」(黒住卓司氏との共著)を国際的に影響力のある学術雑誌へ投稿するための改訂作業を進める。改訂作業は24年度中に国内外でのコンファレンス、ワークショップ、セミナーで得られたコメントを反映させることが中心となる。 名目金利の非負制約を考慮した動学的一般均衡モデルに関する研究については、24年度中に作成した論文「Interest-Rate Lower Bound and Parameter Bias in an Estimated DSGE Model」(井上篤氏との共著)を、いくつかのコンファレンスやセミナーで発表しコメントを反映したうえで、ワーキングペーパーとして公表した後、学術雑誌への投稿という手順を踏む予定。現段階では、6月にNorth American Summer Meeting of the Econometric Society、7月にInternational Conference on Computing in Economics and Financeでの発表が決まっている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、ほぼ計画通り研究費を使用した。若干の残金は、次年度の出張旅費に使用する予定。 25年度は、国際コンファレンスやワークショップにおいて論文報告を行なうため、2~3回の海外出張を計画しており、そのための費用が研究経費の殆どを占めることになる。その他、論文の英文校閲や学術雑誌への投稿にかかる費用にも使用する予定。
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