2011 Fiscal Year Research-status Report
大規模金融機関破綻処理の経済へのインパクト:日本の金融危機の再検討
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23730307
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鯉渕 賢 中央大学, 商学部, 准教授 (60361672)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 銀行破綻 / 大規模金融機関 / 日本 / 金融危機 |
Research Abstract |
本研究の目的は、2000年代後半以降の米欧の金融危機における新たな知見を元に、1990年末から2000年前半の日本の金融機関破綻が経済に与えた負の影響がどのような要因に依存していたか、金融機関破綻処理の枠組みの構築により軽減されたかを、金融機関の株価及び中小企業を含む大規模データベースを用いたイベントスタディによる実証分析によって再検討することである。 3年間の予定の研究期間の初年度となる平成23年度は、研究資料収集、データベースの購入、購入したデータベースを分析可能なパネルデータに変換する等の研究環境の整備を行うことであったか、これについて必要な環境整備を年度内に実施することができた。また、日本の過去の金融機関破綻事例のうち、特に1997年に破綻した北海道拓殖銀行について、現地調査を行って、銀行破綻とそれに続く営業譲渡が、どのように顧客企業のパフォーマンスに影響しうるかについて予備的な知見を得た。大規模金融機関破綻の他の金融機関の株価へのインパクトの実証的研究については、主に米国金融危機における大規模金融機関破綻と救済のインパクトについての文献を詳細に分析した。 本研究の意義と重要性は、第一に、米国金融危機における大規模金融機関破綻と救済については、近年、金融監督における新たな政策観点であるマクロプルーデンス政策との関連を強く意識したものになっている。日本の過去の大規模金融機関の破綻についてもこうした知見を盛り込むことにより、新たな政策枠組みの中での大規模金融機関破綻処理の研究として重要性を持つ。第二に、研究開始後の2011年の後半にかけて、欧州ソバリン債務危機が深刻化した。この危機はユーロ圏内の経済危機という側面を持つものの、財政危機が銀行危機が互いに共鳴しているという点で、本研究の課題と共通性を多く持っており、新たな知見を獲得すべく事態の進展を注視している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の予定の研究期間の初年度として、既に必要なデータベースの整備を行い、米欧の金融危機の既存文献のサーベイを開始している。さらに、国内の銀行破綻事例について現地調査等も実施した。一方で、当該年度後半において欧州ソバリン債務危機の深刻化が顕著であったことなどが影響し、日本の過去の銀行破綻事例についての実際の実証分析の開始は新年度に持ち越しとなった。したがって、当該評価区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の2年目は、まず年度の前半に米欧の金融危機についての既存文献のサーベイを完了し、さらに欧州ソバリン危機について現状評価を含めた日本語論文を作成し、学会での発表を行う予定である。さらに、こうした米欧の金融危機からの知見を元にして、日本の大規模金融機関破綻処理のインパクトについての実証分析を実施し、論文執筆を開始する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額については、本年度に国際学会への出席ができなかったためであり、次年度前半に開催される国際学会の旅費の一部に充当する予定である。
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