2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730310
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
鈴木 史馬 明星大学, 経済学部, 助教 (60583325)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 大災害リスク / 資産価格 |
Research Abstract |
「大災害リスクの資産価格・消費平準化行動に与える影響」をテーマとする本研究は、2つの研究プロジェクトを遂行する。(1)歴史的大災害の資産価格に与える影響の考察と、(2)大災害リスク顕在化時における消費平準化行動の理論・実証的考察である。 (1)としては、次の研究を行った。[1] Saito and Suzuki (2011)において持続的な大災害リスクを前提とすると、大災害顕在化直後に株価高騰が生じることを理論的に示し、その長期的な株式リスクプレミアムへのインプリケーションを分析した。[2] Suzuki (2012, a)では、第二次大戦期のナチスドイツ占領下諸国で観察されたGDP、消費の持続的低下と株価高騰は、定量的な観点からも、整合的であることを示した。Saito and Suzuki (2011)は、国際査読誌からの改訂要求があり、改訂を行ったうえで再投稿を行った。Suzuki (2012, a)は、査読を経てResearch in Economics誌への採択が決まった。さらに、[3]これまでの研究で注目した第二次大戦期金融市場の分析を、日本に絞って詳細な実証分析を行うことを計画している。 (2)の研究としては、以下研究を行った。[4] 大災害リスクとして戦争や自然災害のほかに、大規模な金融危機も重要である。Suzuki (2012, b)では、Aiyagari and Gertler (1999)のモデルを拡張し、単純な純粋交換経済の均衡において金融危機のような現象が生じる状況を構築し、そこでの家計間の消費平準化行動の分析を行った。これは、国際学会(査読付き)European Economic Associationでの報告が決まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学術雑誌への掲載が決まったこと。また、改定要求が来てその際投稿を行ったことなど、具体的な成果があった。それ以外にも、申請書執筆段階で計画した研究についての具体的な進捗が見られた。以上の理由からおおむね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を発展させ、理論・実証的な研究を進めることを計画している。(1)の資産価格に関する研究については、[4] 主に理論的な観点から、これまでの合理的期待モデルを主観的期待形成に変更した場合の資産価格形成へのインプリケーションを考察することを計画している。また、[3]として説明した、日本についての第二次大戦期金融市場の分析は、具体的には、戦時期の新聞の情報から、日次株式データセットの構築を行っている。これにより、戦争の推移に関する情報に対して投資家はどのように将来に対する見通しを形成したのかを考えていく。また、(2)に関連する研究として、[5] 大災害リスクの国際的な消費平準化行動を分析するための予備的な作業として、Barro-Urusuaによる20世紀の消費・GDPデータセットとDMSデータセットとの接合を行った。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究では、これまでの研究の蓄積を論文としてまとめ、国際学術雑誌への投稿を行うことを目的とする。そこで、次年度の研究費の使用計画としては、これまでの研究を学会報告として行うこと、また、英語論文を書くことを前提として、英文校正費用も予算の重要な項目である。
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