2012 Fiscal Year Research-status Report
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23730310
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
鈴木 史馬 明星大学, 経済学部, 助教 (60583325)
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Keywords | 大災害リスク / 株式リスクプレミアム |
Research Abstract |
「大災害リスクの資産価格・消費平準化行動に与える影響」をテーマとする本研究は、2つの研究プロジェクトを遂行する。歴史的大災害の資産価格に与える影響の考察と、大災害リスク顕在化時における消費平準化行動の理論・実証的考察である。 歴史的大災害の資産価格に与える影響の考察としては、次の研究を行った。[1] Saito and Suzuki (forthcoming)において持続的な大災害リスクを前提とすると、大災害顕在化直後に株価高騰が生じることを理論的に示し、その長期的な株式リスクプレミアムへのインプリケーションを分析した。[2] Suzuki (2012, a)では、第二次大戦期のナチスドイツ占領下諸国で観察されたGDP、消費の持続的低下と株価高騰は、定量的な観点からも、整合的であることを示した。[3] Suzuki (2013)では、大災害発生直後に、投資家が合理的ではなく、主観的な期待形成をもつような状況における株式リスクプレミアムへのインプリケーションを分析した。[4] 鈴木(2012)では、これまでの研究で注目した第二次大戦期金融市場の分析を、日本に焦点を絞り実証分析を行った。 大災害リスク顕在化時における消費平準化行動の理論・実証的考察の研究としては、以下研究を行った。[5]大災害リスクとして戦争や自然災害のほかに、大規模な金融危機も重要である。Suzuki (2012, b)では、Aiyagari and Gertler (1999)のモデルを拡張し、単純な純粋交換経済の均衡において金融危機のような現象が生じる状況を構築し、そこでの家計間の消費平準化行動の分析を行った。これは、国際学会(査読付き)19th International Conference Computing in Economics and Finance での報告が決まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学術雑誌への掲載が決まったことなど、具体的な成果があった。また、今年度も査読付の国際学会での報告が決まったことなど、申請書執筆段階で計画した研究についての具体的な進捗が見られた。以上の理由からおおむね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を論文の形でまとめ、発表や国際的学術雑誌への投稿を行うことを計画している。歴史的大災害の資産価格に与える影響の理論的研究については、概ね成果が得られたと考えられる。そこでこれを論文としてまとめ学術雑誌への投稿することが必要である。一方で、日本についての第二次大戦期金融市場の分析は、紀要論文として予備的な分析を行ったものの本格的な分析は今後の課題である。そこで、戦争の推移に関する情報に対して投資家はどのように将来に対する見通しを形成したのかを考える実証研究を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究では、これまでの研究の蓄積を論文としてまとめ、国際学術雑誌への投稿を行うことを目的とする。そこで、次年度の研究費の使用計画としては、これまでの研究を学会報告として行うこと、また、英語論文を書くことを前提として、英文校正費用も予算の重要な項目である。
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