2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730313
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
坂井 功治 京都産業大学, 経済学部, 助教 (80548305)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 金融論 |
Research Abstract |
本研究課題の初年度である平成23年度は、第一に、貸出市場の資金再配分に伴う調整コストの計測方法について、広く既存研究のサーベイを行った。具体的には、銀行や投資家、あるいは家計のポートフォリオ調整に伴う調整コストの計測方法、また、雇用や資本、あるいは価格の調整に伴う調整コストの計測方法など、分野にこだわらず広範囲にわたって既存研究のサーベイを進めた。以上のサーベイにより、partial adjustment modelやadjustment hazard modelといったいくつかの推定モデルの特性や関係性、応用事例などについて広く学ぶことができ、貸出市場の資金再配分に伴う調整コストの計測方法について、いくつかのアイデアに繋がった。第二に、次年度以降の実証分析の準備として、いくつかのデータ整理を並行して行った。ひとつは、日経NEEDS Financial Questの金融機関別借入金データについて、銀行の合併・統合による貸出残高変動のバイアスを除去するため、当該データに過去のすべての銀行の合併・統合情報を追加入力するとともに、合併・統合による貸出残高変動のバイアスを調整した。もうひとつは、法人企業統計データについて、業種ごと、規模階層ごとにデータをダウンロードし、業種・規模階層ごとのパネルデータを構築した。第三に、貸出市場の資金再配分に関する論文のうち、貸出市場の資金再配分指標の長期的な時系列推移を分析した論文、貸出市場における担保の機能と役割を分析した論文などが、それぞれ学術誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
貸出市場の資金再配分に伴う調整コストの計測方法について、当初目星をつけていた分野や論文のサーベイからは有用なアイデアを得ることができず、分野を広げて広範囲にわたってサーベイをやり直す必要が生じたため、結果として計測手法のアイデアに辿り着くまでに当初の想定よりも長い時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、adjustment hazard modelをベースとして、推定式を定式化する。その後、実際の貸出データを用いて、資金再配分に伴う調整コストを統計的に計測していく。データに関しては、推定された調整コストの時系列方向とクロスセクション方向の性質を詳細に見たいとの理由から、時系列方向の情報が豊富なマクロデータとクロスセクション方向の情報が豊富なミクロデータの双方を用いて分析を行う。現状、マクロデータとしては、財務省の「法人企業統計」を、ミクロデータとしては、日経Financial Questの「金融機関別借入金データ」を想定している。サンプル期間は、できる限り長期の期間を対象とすることとし、1960年-2010年の約50年間を想定している。以上のデータを用いて、まずは貸出市場における資金再配分の指標を算出する。以上で算出された指標を用い、上述の推定方法と推定式にもとづき、資金再配分に伴う調整コストを推定する。そして推定された調整コストについて、調整コストの時系列方向の性質、貸出のcreation、貸出のdestructionそれぞれの調整コストの大きさ、景気変動と調整コストとの関係、などについて検証を行う。以上で得られた結果にもとづき、近年の理論研究がそのミクロ的基礎としている貸出市場のサーチ理論の妥当性について検証を行う。また、得られた結果から、現実の日本経済あるいは貸出市場の資金再配分に対する含意についても検証を行う。以上の検証を整理してまとめたうえで、最終的な統計的検定と頑健性チェックを経て、原稿にまとめるとともに、学会やコンファレンスでの報告を通じて、研究者からの意見や助言を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究者との打ち合わせのための調査研究旅費、学会やコンファレンスでの成果報告のための成果報告旅費、海外学術雑誌へ投稿するための英文校閲、および投稿料などを計上している。研究進捗の若干の遅れによる次年度への繰り越し分については、上述の成果報告旅費の一部として計上している。
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