2011 Fiscal Year Research-status Report
非伝統的金融政策の実施によるマクロ経済効果に関する比較実証研究
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23730314
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
英 邦広 同志社大学, 商学部, 講師 (40547949)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 非伝統的金融政策 / 金利の期間構造 / 時系列分析 / 市場の期待形成 / 実体経済 |
Research Abstract |
本研究は、主要国の中央銀行(米国、欧州、英国、日本)が米国で起きたリーマンショック後の2008年9月以降、矢継ぎ早に採用してきた「非伝統的金融政策」の政策運営に関して、実証的アプローチを用いて検証することが目的である。特に、非伝統的金融政策の枠組みを理論的、制度的に整理し、「市場の期待形成」と「実体経済」への影響を分析することで先行研究との差別化を図り、金融政策運営の研究の発展に寄与することを目標としている。1年目は、「I.論文のサーベイ」と「II.経済状況の確認」の2つを中心に行った。「I.論文のサーベイ」に関しては、名目金利がゼロ制約に直面している時の非伝統的金融政策の理論分析に関する内容が記述された論文や各国の中央銀行や政府関係者が発表した報告書や調査レポートを手に入れることができる範囲内で入手し、その内容を理解・把握した。また、各国の中央銀行が実際に行った非伝統的金融に関する実証分析の論文も手に入れることができる範囲内で入手し、その内容を理解・把握した。以上の作業では、各国の中央銀行が同じ手段を用いて政策行動を実施しているが、政策効果は各国によって異なっていることが理解できた。その原因として、規模、市場との対話、政策のタイミングが考えられる。「II.経済状況の確認」に関しては、主要国のGDP、物価指数、為替レート、金利、株価といった経済データを手に入れることができる範囲内で入手し、その動きを調査した。2011年以降のギリシャ財政問題により、世界の経済・金融危機はより一層深刻なものになったが、欧州各国の協力によりギリシャ国債に対する債務カットの合意ができたおかげで一段落できたように思える。しかし、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインといった国々も財政状況が芳しいといえないので今後も引き続き、経済データの推移に着目し、実体経済の動きを把握していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画一年目の作業として、「I.論文のサーベイ」と「II.経済状況の確認」の2つを中心に行ってきた。その中で、「I.論文のサーベイ」は、学術論文や中央銀行・政府が発表する報告書や調査レポートを入手し、閲覧してきたので、計画通りに進んでいるといえる。しかし、「II.経済状況の確認」は、2010年以降のギリシャ財政問題による影響が予想よりも大規模であったことと他の欧州各国の財政問題により今後の欧州経済全体の動きをもう少し丹念に調査していく必要があるため、当初よりは時間がかかっている。全体的には、おおむね順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書に明記したように、2年目の研究計画は、「III.中央銀行の政策判断の確認」と「IV.分析に関するデータ収集」を行うことである。「III.中央銀行の政策判断の確認」に関しては、主要国の中央銀行(米国、欧州、英国、日本)が相次いで政策金利を引き下げたことでどのような効果が生じたかを比較調査するとともに、市場に大量の流動性を段階的に供給したことでの効果に関しても同様に比較調査する。「VI.分析に関するデータ収集」に関しては、実証分析を行う上で必要なデータを中央銀行、政府統計局等の機関が公表している報告書やホームページから入手する。なお、1年目に計画していた「II.経済状況の確認」であるが、ギリシャの財政問題が当初に想定していたよりも深刻な経済・信用危機を世界に引き起こしたため、その影響によって市場がどのように反応し、マクロ経済データの動きがどのように変化したかを今後、丁寧に見ていく必要が出てきた。したがって、2年目では経済状況の確認も継続して行う。3年目は本研究課題の最終年度になるため、1年目と2年目で確認した内容やデータを基に非伝統的金融政策の効果を検証していく。具体的には、政策金利の低下と大量の流動性供給が中央銀行によって公表されたことで市場の期待形成や実体経済に影響を与えたかを分析する。本研究では、非伝統的金融政策が市場の期待形成や実体経済に及ぼした影響を検証することで、金融政策運営に貢献できる内容に完成させる。また、完成させた内容は学会・セミナーでの報告、学術雑誌に投稿すること、ホームページに掲載することを通じて世間に研究成果を公表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書には、2年目の研究費使用計画に関しては、物品費に29万円、旅費に40万円、人件費・謝金に6万円、その他に15万円の計90万円に支出を予定していたが、ギリシャの財政問題により、1年目の研究計画を次年度も継続して進めることになったので、その分、2年目以降の研究費支出計画に変更が生じた。2年目以降の研究費支出として、データを入手するための費用や論文に仕上げた場合の英文校閲料・投稿費等が当初より増えることが予想される。
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