2012 Fiscal Year Research-status Report
非伝統的金融政策の実施によるマクロ経済効果に関する比較実証研究
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23730314
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
英 邦広 中京大学, 経済学部, 講師 (40547949)
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Keywords | 非伝統的金融政策 / 金利の期間構造 / 時系列分析 / 市場の期待形成 / 中央銀行 / 実体経済 |
Research Abstract |
本研究は、主要国の中央銀行 (米国、英国、日本)が米国で起きたリーマンショック後に矢継ぎ早に採用した「非伝統的金融政策」の政策運営に関して、実証的アプローチを用いて検証することが目的である。特に、非伝統的金融政策の枠組みを理論的、制度的に整理し、「市場の期待形成」と「実体経済」への影響を分析することで先行研究との差別化を図り、金融政策運営の研究の発展に寄与することを目標としている。 2年目は、「III.中央銀行の政策判断の確認」、「IV.分析に関するデータ収集」の2つを行った。「III.中央銀行の政策判断の確認」に関しては、各国の中央銀行や政府関係者が発表した報告書・調査レポートやリーマンショック後に中央銀行が実行した政策とその効果に関する研究論文を入手し、その内容を理解・把握することを行った。以上の作業から、中央銀行が政策金利を引き下げることや流動性を供給するといった手段を用いたとしても、その効果は一様に表れるものではなかった。また、同じような金融緩和を実行したとしても、1回目と2回目ではその効果が異なる場合も存在していたことが確認できた。こうした状況が生じた背景には質的・量的要因、市場との意思疎通、政策実行のタイミングが考えられる。次年度ではそうした影響を考慮し、分析を行う。 「VI.分析に関するデータ収集」に関しては、学内外のデータベース、各国の中央銀行、財務省、政府統計局等といった機関からマクロ経済データを手に入れ、その動きを調査した。具体的には、主要国のGDP、物価指数、為替レート、金利、株価といったデータを入手した。欧州地域での財務の脆弱にともなう問題、米国の財政問題、日本の財政の規律や政情不安による問題、資源の国際価格の高騰、中国を含む新興国の物価・資産価格の高騰といった問題が存在しているため、次年度も引き続き、経済データの推移に着目し、実体経済の動きを把握していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施二年目の作業として、「III.中央銀行の政策判断の確認」、「IV.分析に関するデータ収集」の2つを中心に行ってきた。 「III.中央銀行の政策判断の確認」では、中央銀行・政府が発表する報告書や調査レポート、学術論文等を入手し、閲覧してきたものの、欧州地域における財務の脆弱にともなう問題、米国における緊縮財政措置による景気悪化問題、日本における2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震にともなって起きた東日本大震災による影響や財政の規律問題、資源の国際価格の高騰、中国を含む新興国の物価・資産価格の高騰といった世界経済を不安定化させる要素が考えられるため、各国の中央銀行が実行する非伝統的金融政策運営との関連を適正に把握・分析していくことに時間を要することとなった。そのため、当初の計画より時間がかかっている。 また、「IV.分析に関するデータ収集」では、学内外のデータベース、各国の中央銀行、財務省、政府統計局等といった機関からデータを手に入れているので、当初の計画通りといえる。以上より、全体的には、おおむね順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書に明記したように、3年目が本研究課題の最終年度になるため、1年目で行った「I.論文のサーベイ」と「II.経済状況の確認」と、2年目で行った「III.中央銀行の政策判断の確認」と「IV.分析に関するデータ収集」で確認した内容やデータを基に非伝統的金融政策の効果を検証していく。具体的には、政策金利の低下と大量の流動性供給が中央銀行によって公表されたことで市場の期待形成や実体経済に影響を与えたかを分析する。特に、この2年間で金融政策運営を分析する際には、質的・量的要因、市場との意思疎通、政策実行のタイミングを考慮する必要があることが確認できたため、上記の要因をできる範囲で対応していくことにする。 本研究では、非伝統的金融政策が市場の期待形成や実体経済に及ぼした影響を検証することで、金融政策運営に貢献できる内容に完成させる。また、完成させた内容は研究論文としてまとめ、学会・セミナー等で報告したり、学術雑誌に投稿したり、ホームページに掲載したりすることを通じて世間に研究成果を公表していくことにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書には、3年目の研究費使用計画に、物品費に29万円、旅費に40万円、人件費・謝金に6万円、その他に15万円の計90万円を支出予定しているが、1年目の時にギリシャの財政問題が生じたため、研究計画を次年度に継続することとなった。そのため、研究費支出計画に変更が生じた。3年目の研究費支出としてはデータを入手するための費用や論文に仕上げた場合の英文校閲料・投稿費等が当初より増えることが予想される。
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