2011 Fiscal Year Research-status Report
公的資金注入がマクロ経済システムの安定化に与える影響
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23730317
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
中島 清貴 甲南大学, 経済学部, 准教授 (00367939)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 公的資金注入 / 介入効果 / 金融システムの安定化 / 差分推定 / 介入効果推定量の小標本問題 |
Research Abstract |
本研究は,1998年3月に実施された金融機能安定化法に基づく邦銀21行に対する資本増強(第1回公的資金注入)と1999年3月に実施された早期健全化法に基づく邦銀15行に対する資本増強(第2回公的資金注入)の介入効果(treatment effect on treated)を推定し,日本の公的資金注入がどのような意味で機能し,どのような意味で機能しなかったのかを分析している.より具体的には,公的資金注入が,まずは,銀行システムの安定化を基点とし,その上で,銀行の貸出行動や収益性についても改善を促す包括的な政策プログラムであることを考慮した上で,(1)公的資金注入は,資本注入行の信用リスクや不良債権比率を低下させるという意味において,注入行の財務リスクの低下にどの程度まで寄与したのか,(2)もし,寄与したのであれば,銀行の収益性や貸出行動を改善させるような効果はあったのか,(3)そもそも,公的資金注入後の日本において,邦銀の財務リスクの低下が銀行貸出を促すような素地があったのか,もし,そうした素地がなければ,公的資金注入後の銀行貸出はどのような要因によって特徴付けられるのか,という3つの問題を分析の射程に置いている・現段階では,日本の2度の公的資金注入は,邦銀の財務リスクを低下させたという意味において金融システムの安定化に大いに寄与した可能性があるが,政策プログラムとしての公的資金注入だけでは,貸出や銀行の収益性を改善させるにはいたらなかった可能性が指摘される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は,論文を作成した上で,日本経済学会での報告,カンファレンスでの報告を行い,討論者や学会参加者,そしてカンファレンスの参加者より非常に有益なコメントを得ることが出来た.昨年度得ることが出来たコメントを参考にしながらより洗練させた分析を遂行し,日本国内での発表だけでなく,海外での発表も行っていきたいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の分析課題は次の2点である:課題1.公的資金注入後の銀行貸出の分析に関して,現段階では,銀行側の要因(供給側の要因)のみが考察されているが,借入企業側の要因(需要側の要因)も併せて分析することが出来れば,と考えている.課題2.課題1と関連することであるが,銀行の財務的な安定性や収益性についても,銀行側の要因のみならず,借入企業側の要因も併せて分析することで,これまでの先行研究において考察されることのなかった新しい分析上の知見が得られるのではないか,と考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成24年度)は外留によって,米国のカリフォルニア大学サンディエゴ校に滞在することになっている.まずは,米国の学会やカンファレンスでの発表のための旅費に充当したいと考えている.研究旅費以外には,金融機関と借入企業の財務データの購入に充当する予定である.
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Research Products
(3 results)