2011 Fiscal Year Research-status Report
分権化時代の自発的な道州形成に関する研究-経済実験とシミュレーションによる接近-
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23730319
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
竹本 亨 帝塚山大学, 経済学部, 准教授 (60551512)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地方財政 / 経済実験 |
Research Abstract |
これまでの多くの(都道府県合併による)道州制や市町村合併に関するシミュレーションの研究では、合併する組み合わせは外生的に与えられていたが、現実にはどこと組むかということ自体が各自治体の行動によって内生的に決まる問題である。そこで、本研究では各都道府県をプレイヤーとする提携形成ゲームとして自発的な道州形成を分析する。 全体計画は次のようなものである。これまでの研究で財政データ等から統合効果を数値シミュレーションで算出しており、それを利得とした提携形成ゲームを作成し、それに対する均衡を理論的に計算する。そして、同様の提携形成ゲームについて経済実験を行い、人々の意思決定と比較する。 23年度は、京都産業大学の設備を借り、同大の学生を被験者として以下のような経済実験を実施した。3人が一組となり、予測される(3つの自治体の)統合効果を利得とした提携形成ゲームをプレーした。用意した提携形成ゲームは、全員が合併する全提携戦略が強ナッシュ均衡とならず、それとは別に1つの強ナッシュ均衡が存在するような利得になっていた。この実験の結果を統計的に分析したところ、強ナッシュ均衡戦略より全提携戦略の方が選ばれやすいというものであった。この結果は理論的な予想と異なっており、これを説明する何らかの理論が必要な状況である。現在のところ、2つ行った提携形成ゲームのうち、優加法性を満たすものについては、不平等回避理論によって説明が可能であることがわかった。しかし、それ以外の理論で説明できないかどうかさらなる検証が必要である。また、優加法性を満たさないケースについては、不平等回避理論では説明できない。 本年度は帝塚山大学でも経済実験を行い、より多くの種類の提携形成ゲームでの結果を集める予定であったが、以下で説明するような理由により実施できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
帝塚山大学において、経済実験を実施する予定であったが、実施できなかった。その理由は以下の通りである。当初の研究計画では、帝塚山大学には経済実験専用設備はないため、PC室において「目隠し用PC卓上衝立」を各机に設置して、ほぼ経済実験専用室と同じ環境を構築することとしていた。しかし、予算の3割が交付されない可能性があるとの通知を受け、その場合にはこの「目隠し用PC卓上衝立」の購入を取りやめることで対応する事とした。ただし、その場合には実験環境に問題があるため、本学での経済実験の実施は諦め、他大学の設備を借りての実験のみに計画を縮小することとした。いずれにしろ、予算措置の結果がわかってからでは被験者を集めるのに十分な準備時間がとれない(これまで本学では研究用の経済実験を実施したことがないこともあり、前学期から告知をして事前登録者を集める必要があった)ため、本学での実験実施を来年度以降に延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、帝塚山大学においても提携形成ゲームの経済実験を実施する。まずは、23年度の経済実験で明らかになった点(主なものとしては、「強ナッシュ均衡戦略より全提携戦略の方が選ばれやすい」)について頑健性の検証を行うため、利得を変えた別のゲームで経済実験を実施する。次に、23年度とは異なる均衡を持つゲームについて経済実験を実施する。 なお、これまで帝塚山大学では研究目的の経済実験は実施されてこなかったため、何らかの不測の事態に備えるため、23年度に実施した京都産業大学でも経済実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、帝塚山大学で経済実験を実施するため、PC室において各机に設置する「目隠し用PC卓上衝立」を購入する。これによって、ほぼ経済実験専用室と同じ環境を構築することができると考えている。 また、23年度は他大学での実験しか実施できなかったため、実験回数が少なかったが、24年度ではより多く実施していく予定である。そのため、それに参加する被験者に対して支払う謝金も増加すると予想される。 成果報告についても23年度と同様に、学会や外部の研究会での報告を予定している。
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Research Products
(1 results)