2012 Fiscal Year Research-status Report
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23730324
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 千映 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10388415)
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Keywords | イギリス経済史 / イングランド / 産業革命 / 女性労働 / 職業構造 / 史料論 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本年度も,昨年度に引き続きデータ入力を行った。 本研究の第一の課題は,当時イングランドに存在していた約12,000の教区のうち,1834年の救貧法に関する議会報告書で調査が行われた1,000あまりの教区について,女性の就業に関する情報が得られる最初のセンサスである1841年センサスの個票との連結作業である。昨年度には,デジタル化がすでに行われているノーサンプトンシャーとコーンウォールについてのデータ整理に加え,ancestry.co.ukというセンサス個票の画像データを提供しているサイトからデータ整備を開始し,ベッドフォードシャーについては入力を完了した。本年度は,これに加えて,ヨークシャーの56教区のうち44教区についてデータ入力を完了した。 国際研究者交流に関しては,7月に南アフリカで開催された第16回世界経済史会議(3年に一度の開催)に参加し,昨年度に招聘したJelle van Lottum氏などと情報交換を行った。また,9月に英国ケンブリッジ大学で開催された第7回日英歴史家会議(こちらも3年に一度の開催)で,センサスも含まれる国家統計の整備について,日英比較的観点から報告を行った。 データ入力が完了していないため,1841年センサスに依拠したものではないが,ミッドランド北部の都市ウォルヴァハンプトンの職業構造について共著の一章を執筆した。また,より一般的な世帯の労働供給行動について,社会経済史学会の80周年記念誌に寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
英国エセックス大学によるセンサスのデジタル化プロジェクトの進捗状況が,申請段階で想定していたものよりも遅れていることから,1841年センサスの個票から得られる情報(住所,氏名,年齢,性別,職業,出生地)を,独自にデジタル化する必要が生じている。昨年度に入力を進めたベッドフォードシャーに比べて,本年度進めてきたヨークシャーは,都市化の進んだ地域が少なくないため,個々の教区の人口が格段に多く,ベッドフォードシャーについての経験からの想定よりも,データ入力に時間がかかっているのが現状である。また,職業情報については,ancestry.co.ukではデジタル化がなされていないため,完全に手入力で進める必要があるが,思った以上に史料の状態が悪く,判読が難しい箇所が少なくない。これも,作業の遅れをもたらしている。 国際研究者交流については,本年度は招聘は行わなかったが,自身で渡航した際に,多くの外国人研究者の方と情報交換を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は,前半で選択的なデータ入力とデータ整理を進め,後半には学術論文の執筆を進める。データ入力については,効率化を図ることと,意味のある地理的分布を考慮に入れた教区(州)の選択を図ることが肝要となる。前者については,抜本的な改善案はないが,手書き文書の文字認識技術(HWR: Handwriting recognition)の利用可能性について探りたい。後者については,関連文献から州の経済的な特徴を押さえつつ,イングランド全体を代表できるようなデータセットの構築に努めたい。 また,第17回世界経済史会議(2015年8月に京都で開催予定)は,アジアで初めて開催されることもあって,日本人研究者の積極的な参加が期待されている。第一次セッション公募はすでに開始され,9月が締切となっている。ケンブリッジグループやvan Lottum氏などと連携しつつ,国際的なセッションを構築して応募することを通じて,国際研究者交流につなげていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度においては,前半までにデータ入力を完了する予定なので,人件費を圧縮し,15万円程度を支出する。後半においては学術論文の執筆を念頭に,海外での学会報告を予定している。このため,旅費を30万円計上する。また,英語論文の校正等に充てるため,その他として5万円を計上する。
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