2011 Fiscal Year Research-status Report
第一次大戦後の国際金融センター・ロンドンにみる繁栄持続の基盤的要因
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23730326
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
古賀 大介 山口大学, 経済学部, 准教授 (50345857)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | クリアリングバンク / インターバンク / 国際業務 / イギリス / ユーロダラー |
Research Abstract |
本年度は、まず長期的視点(1900-1980年代)からクリアリングバンクの国際業務に関する先行研究整理を改めて網羅的に行い、研究史から浮かび上がる各主要クリアリングバンクの国際戦略の特徴とその変遷過程を確認した。1920年代以降に本格化するクリアリングバンクの国際業務の展開は、コルレス関係重視型と直接海外進出型に分かれるが、本研究では、1900年前後に外国部を設置し、コルレス関係重視型の国際業務展開を目指した銀行群にまず注目することにした。これは、クリアリングバンクを中心とするインターバンクネットワークの発展→ユーロダラー市場の発展→戦後における国際金融センターロンドンの発展という仮説を意識したものである。 以上を踏まえた上で、ロイズ銀行・ミッドランド銀行の「ロンドン本店・外国部」における1900-1980年代の国際業務に関する史料調査を、各銀行の継承銀行アーカイブにて行い、多数の史料を入手した。また、本研究協力者で、ユーロダラー市場萌芽期の研究にも従事しておられる東北大学菅原歩准教授と、1930-1960年代にかけてのクリアリングバンクの国際戦略とユーロダラー市場発展の関連性について意見交換を行い多くの知見を得た。一連の作業から1.後に各クリアリングバンクの国際戦略に大きな影響を与えることになる1900-1910年代、2.「ポンド体制」が大きく揺らぐ1920-1960年代、3.ユーロダラー市場発展が本格的となる1960-1980年代の3つの時代区分による研究を今後展開する手はずを整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、主要クリアリングバンクの国際業務の展開(1920-1960年代)に関する史料調査を本年度中に一括して行う予定であったが、事情により、これを複数年度に分けて行うことにしたため、研究の進捗状況が予定よりも若干遅れることになった。その事情とは、1. 研究史の再整理により、主要クリアリングバンクの国際戦略が大きく2つに分かれることを改めて確認し、それぞれの特徴に合わせた丹念な資料調査を行う必要性が出てきたこと。2.本年度の研究過程で、研究テーマのより深い理解・分析には、当初予定していた研究対象期間(1920-1960年代)よりも、より長期にわたる期間(1900-1980年代)を射程に納める必要があるとの考えに至り、この結果、調査対象となる史料の分量が必然的に増加したことである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後3年間は、先に述べた時代区分に基づく研究に従事する。次年度、具体的には、1. 20世紀初頭における外国部設置・コルレス関係重視型クリアリングバンクの国際業務に関する論説を取りまとめる。2. 1920年代以降における直接海外進出型クリアリングバンクの国際業務に関する史料調査を、該当銀行を継承する銀行のアーカイブにて行う。3. 1930年代‐1960年代におけるクリアリングバンクが介在するインターバンク市場の発展とユーロダラー市場の形成に関する研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度分に繰り越しが生じたことについて、11.で述べた事情から計画に変更が生じたことが主な理由である。具体的には、当初2度渡英するところを1度にし、かつ、その1度を当初の予定より、必要上やや長期に滞在したこと、また、研究協力者との会合を行ったことなどから、旅費執行額は結果的に当初予算を若干下回った。こうした事情から、当初、現地資料調査を終えた後に行う手筈であった、資料整理のための人件費・物品費も未使用となった。これらの経費は、次年度計画している以下の調査等経費の一部に充当する予定である。平成24年度は、バークレー銀行など直接海外進出型の国際業務に関する資料調査をイギリスにて行うため、その調査旅費を計上する。これに関する資料整理関連の人件費・物品費も計上する。また、来年度も、研究協力者である東北大学菅原歩准教授との意見交換勉強会を開催するため、国内出張旅費を計上する。
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