2011 Fiscal Year Research-status Report
19世紀のロンドン-地方都市間のビジネス・ネットワークの形成に関する事例研究
Project/Area Number |
23730327
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
熊谷 幸久 琉球大学, 法文学部, 講師 (20570253)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | イギリス経済史 / グラスゴー / ロンドン |
Research Abstract |
研究初年度となる2011年度は、本研究の目的である19世紀のスコットランド地方とロンドンとの間のビジネス・ネットワークの再現を目指し、グラスゴーのジェームズ・フィンレー商会と、そのロンドン子会社であるフィンレー・ホジソン商会に関する既往の文献の調査及びロンドンとグラスゴーでの史料の収集と分析を行った。 収集したジェームズ・フィンレー商会の記録に含まれるこれら二つの商会の残高表(balance book)などの史料の分析を中心に行った結果、ジェームズ・フィンレー商会のパートナーであると同時に、カークマン・フィンレーと共にフィンレー・ホジソン商会を設立したジョン・ホジソンは、1834年末という比較的早い段階で、ジェームズ・フィンレー商会におけるパートナーシップ関係を解消し、同商会の経営から離れていたことが判明した。また、同じロンドンを拠点とするベアリング・ブラザー商会にフィンレー・ホジソン商会が吸収・合併された1867年よりも遥か以前の1842年に、ジェームズ・フィンレー商会は、フィンレー・ホジソン商会との資本関係を解消していたことも判明した。 これらのことから、19世紀初頭にフィンレー商会のロンドン子会社として設立されたジョン・ホジソン商会は、時代が下るにつれてグラスゴーの親会社との関係が薄らいでいったと考えられる。しかしながら、資本関係が解消された後も、2つの商会の間では取引が継続されていただけでなく、フィンレー一族においてリヴァプールを拠点としていたトーマス・フィンレーなどがフィンレー・ホジソン商会のパートナーとして留まっていたことなどから、これらの商会の関係は、この時期に完全に途切れてしまった訳ではない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2011年度の研究活動として予定していた既往の文献及びグラスゴーの商人や製造業者に関連するマイクロフィルムの調査は順調に進めることが出来た。また、昨夏にイギリスのロンドンとグラスゴーにおいて、研究に必要なジェームズ・フィンレー商会とフィンレー・ホジソン商会に関する史料の収集と分析も予定通りに行った。しかしながら、現地調査を進める中で、フィンレー・ホジソン商会に関する一次史料が限られていることが判明したことから、ビジネス・ネットワークをどのように再現することが出来るか、再検討せざるを得ず、研究がやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2011年度の調査によって、グラスゴー大学アーカイブ・サービスとベアリング・アーカイブが所蔵するフィンレー・ホジソン商会に関する史料の年代が、残高表の場合は1832年から1843年まで、その他の史料の場合は主に1860年代というようにばらつきがあり、研究に利用しづらいということが判明した。しかしながら、残高表に関しては、ジェームズ・フィンレー商会の同年代の記録も残っているだけでなく、取引相手の名前や所在地などの詳細な情報が記録されており、研究を進めていく上で、非常に有用であることも分かった。 そこで、2012年度は、研究の中心を当初予定していた1860年代から、1830年代と40年代へと変更して、進めていく予定である。この時代には、イギリス東インド会社によって独占されていた中国貿易が開放されおり、2つの商会の活動や関係などにも大きな影響を与えたと推測される。 また、ケンブリッジ大学のジャーディン・マセイソン・アーカイブにもフィンレー・ホジソン商会の記録が残されていることが判明したので、今年度に現地での調査を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も今年度同様に、既存の文献の調査と4週間のイギリス(ケンブリッジ、グラスゴー、ロンドン)での資料収集を継続する予定である。そのための費用は以下のように見込んでいる。・イギリスでの現地調査 渡航経費‐280,000円 滞在経費‐290,000円・イギリス経済史関係図書の購入費‐100,000円・消耗品費‐30,000円
|