2012 Fiscal Year Research-status Report
サービス・イノベーションを生み出す地域企業のコア形成に関する研究
Project/Area Number |
23730335
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内田 純一 北海道大学, 観光学高等研究センター, 准教授 (40344527)
|
Keywords | 北海道 / 地域企業 / 観光産業 / サービス / イノベーション |
Research Abstract |
サービス・イノベーションに関する研究は従来、大企業それもICT分野を対象とすることが多かった。本研究はサービス・イノベーション研究の対象を地域の中小企業(地域企業)に定めて研究を行おうとするものである。 地域企業には、大企業はもちろん都心部に立地する中小企業と比較しても不利な点が多い。市場との距離が物理的に離れていることにより、マーケティング上は情報的経営資源(無形資産)を蓄積することが難しく、取引先企業との間で情報を共有して生産効率化や新製品開発を行う機会も得がたい。しかし、その一方で地域企業には地域に立地するがゆえに、都心部の企業には得られない独自のコア資源を形成する可能性もある。例えば、地域資源の活用や地場産業集積地に立地することで得られる情報などがそれである。本研究は、こうした地域企業ならではの「コア形成」とサービス・イノベーション論とを結びつけ、地域企業に特化したサービス・イノベーション論の知見を生み出すことを目的としている。疲弊する地方部からイノベーティブな企業を生み出すという本研究の方向性は、社会的ニーズにも合致した研究であると思われる。 本年度は、前年に引き続き、北海道や他地域のホスピタリティ産業の実態調査、ホスピタリティ業界をICT技術でサポートする事業者などについて調査した。研究の目的である地域企業のサービス・イノベーション論の対象とすべき産業については、まんべんなく研究が進行しているところである。これまで精神論的な「おもてなし」重視の漠然とした傾向が地方部のホスピタリティ産業には存在したが、本研究は科学的なサービス商品の革新と、サービス・オペレーションの進化に向けて、主に地方企業の実態を把握できるようなデータも収集できていると言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果報告について、研究実施計画上は論文化よりも、学会発表を優先することを想定していたが、本年度はペーパーとして残す作業が結果的に中心となった。来年度は、過去二カ年にわたって調査・分析した内容を総括する年であるが、他の研究者からの助言も得られる学会発表を意識的に行い、合わせて論文化作業を並行して実施する予定としている。全般的には当初の予定通りに研究は進行していると言える。 研究の目的としてあった「サービス・デリバリー・システム」のコアとなる要素の解明については、当初の仮説通りに市場と地域とをつなぐ何らかの「中間的な」役割が必要であることは、定性的研究を積み重ねたことによってはっきりとしてきた。また、その役割が組織論的なリーダーシップだけではなく、ICTがもたらす情報の集約機能によっても代替されることについても、有意なデータが得られているので、最終的にはこうした研究成果をまとめることで、地域企業のコア形成の本質を解明できる見込みであり、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集した北海道内の宿泊事業者を対象にして行った定性調査を理論的に分析する。論文化する作業が最終的なゴールであるが、ブレークスルーとなるアイデアを得るために、学会発表も行っていく。 昨年度から継続していた北海道内のIT・コンテンツ産業の聞き取り調査、現地調査を続け、こうした技術のホスピタリティ業界への応用可能性についての研究も行う。具体的には、ソーシャルネットワーキングサービス上のデータを用い、テキスト分析を行うほか、こうした技術を保有する企業のポテンシャルを考察する。 以上の作業に加え、サービス・イノベーション論を観光業界向けに整備する作業も合わせて行い、論文化していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|