2013 Fiscal Year Annual Research Report
経営学における市場概念の検討をつうじた取引の理論的・経験的研究
Project/Area Number |
23730351
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Research Institution | Tokuyama University |
Principal Investigator |
矢寺 顕行 徳山大学, 経済学部, 講師 (20582521)
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Keywords | 経営学 / アクターネットワーク理論 / 制度論 / 実践論的転回 / 労働市場 / 人材紹介 / エージェンシー |
Research Abstract |
本研究の目的は、取引において市場が果たす役割と、取引と市場の生成・変化の関係について明らかにすることである。具体的には、アクターネットワーク理論と制度論を手がかりとしながら、①財の生成、②行為者の取引能力、③市場の生成の3つの研究課題を明らかにすることである。最終年度としての平成25年度の研究計画は、①から③の総合を行った。アクターネットワーク論と制度論より導かれた理論的枠組みをもとに、事例分析を行い、経験的研究を進めた。 研究実績の第一として、アクターネットワーク論や制度論をもとに近年研究が進められている「市場の社会学」を参照し、労働市場を対象にした分析を行った研究成果を投稿論文として発表した。ここでは、労働市場を、人材を計算可能にする空間として捉える視点を提示し、行為者の取引能力としての企業の採用活動と、人材が採用対象となるプロセスにおける採用企業と人材紹介企業との関わりを分析した。既存の労働市場の議論は、労働市場という場に人材がおり、それを自動的に計算する主体が前提とされていたが、本論文ではそうした前提がいかにして作り出されるのかを、人材紹介が企業側の人材の評価・選抜を可能にしている計算空間を生成したものとして市場を捉える視点を明らかにした。 研究実績の第二は、アクターネットワーク論や制度論、市場の社会学を総合する枠組みとしての「市場の実践論的アプローチ」の理論的特徴と問題点を検討した学内紀要論文である。本研究の課題の③である市場の生成に関しては、経営学においては議論されなかったわけではないが、そこでは、顧客ニーズとそれに応答する新しい価値の提供とのマッチング問題として捉えられた。実践論的アプローチでは、市場を人や物からなる関係的視点から捉えることによって、こうした取引主体がどのようにその能力を獲得するか、すなわち市場それ自体の分析を可能にする枠組みである。
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