2011 Fiscal Year Research-status Report
ベンチャー企業支援者のインセンティブ要因に関する研究
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23730352
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
丹生 晃隆 島根大学, 産学連携センター, 准教授 (00432617)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ベンチャー企業 / 支援人材 / インセンティブ / モチベーション / 業務評価 |
Research Abstract |
ベンチャー企業の育成のためには、効果的な支援活動が不可欠であり、これらの支援者に対する政策的な支援も求められている。本研究では、ベンチャー企業の育成に関わる「支援者」に焦点を当て、効果的にベンチャー企業を支援するためにはどのような方策が必要なのか、雇用形態や職務権限、賃金体系との関連性等、インセンティブ要因に関する分析を行う。研究のスコープとして、ビジネスインキュベーション施設に配属されているインキュベーションマネジャー等、支援者を対象とし、有効なベンチャー企業支援施策の立案に向けた政策的含意を提示することを目的とする。平成23年度は、インキュベーション施設に配属されている支援者の現状を把握するため、施設の運営機関に対して質問票調査を実施した。調査にあたっては、経済産業省の過去の報告書等から294施設を抽出した。郵送法により調査を実施し、有効送付数287に対して95の回答を得た(回収率33.1%)。調査の結果分かったこととして、雇用形態については、嘱託や委嘱、業務委託等、正社員以外の雇用が約半数を占めている。業務権限について、日常的な運営は「任されている」、「ほぼ任されている」で約80%を占めており、支援業務に対しても、約80%の機関で何らかの評価が行われている。しかしながら、業務評価の結果と報酬の関連性については、「報酬は一定」、「評価結果は報酬には考慮されない」が80%超と大多数を占めており、インセンティブ要因が考慮されていない状況が明らかになった。また、一方で、支援者の「仕事のやりがいやモチベーション」という視点からみると、「支援企業の成功」や「支援企業からの感謝の言葉」、「担当業務の内容」等が上位にきており、支援者にとって、金銭的要因は必ずしもインセンティブになっていない状況も明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、研究実績の概要に記載の通り、ベンチャー企業支援者が所属するビジネスインキュベーション施設に対して質問票調査を実施し、今後の研究活動をさらに精緻化する上で必要な現状把握という点で大きな成果を得た。申請時点で研究者が念頭においていた問題意識を再度確認し、また、具体的な数値データを得られたことから、平成24年度に予定していた研究計画の内容もよりクリアになった。以上から「おおむね順調に進展している」と判断するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究成果を踏まえ、ベンチャー企業支援に関わる支援者のインセンティブ要因の分析、成果との関連性の解明に向けて研究を行う。平成23年度に実施した質問票調査は、現状把握という点で、施設の運営機関に対して調査を実施したが、より支援者に迫った研究を行うためには、機関ではなく支援者個人を対象とした質問票調査が不可欠である。平成24年度は、現状把握から明らかになった点や想定される問題点、論点等を質問票に落とし込み、支援者個人に対する質問票調査を行う。年度後半には、特徴的な回答が得られた支援者に対するヒアリング調査も想定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、「次年度使用額」として「920円」が計上されている。これは、旅費等、必要な研究経費を執行した上での残額であり、平成24年度に使用することでより研究活動に資すると考えた結果生じた金額である。平成24年度の予算執行計画として、支援者に対する質問票調査に係る経費(質問票印刷費、郵送費等)をはじめ、ヒアリング調査実施に係る旅費を想定している。
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