2011 Fiscal Year Research-status Report
企業の戦略的考慮と経営者の私的インセンティブが事業・財務戦略へ及ぼす影響の分析
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23730353
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
嘉本 慎介 香川大学, 経済学部, 准教授 (20511463)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | リアルオプション |
Research Abstract |
本申請課題の研究目的は、オプション価格評価理論の動学的枠組みを応用し、現代企業の投資・財務戦略に関する意思決定の分析において考慮されるべきである二つの要素1.競合企業の行動に対する戦略的考慮、2.経営と所有の分離に起因する経営者の私的インセンティブや心理バイアスを明示的に組み込んだ理論モデルを構築し、不確実性下における企業の投資・財務戦略の意思決定のメカニズムを明らかにするとともに、それらの意思決定が企業価値に及ぼす影響を分析することである。 今年度は、将来の投資価値に対する経営者の楽観的な期待と過信が企業投資と資金調達の意思決定に及ぼす影響を考察する研究と製品需要に関する不確実性に加えて潜在的な新規参入企業による市場参入の脅威に直面した状況における独占的地位にある既存企業による生産規模の拡張に関する投資の意思決定とその投資の価値評価を分析する研究を実施した。 将来の投資価値に対する経営者の楽観的な期待と過信が企業投資と資金調達の意思決定に及ぼす影響を考察する研究について、株式の公募増資による投資費用の調達の程度に依存しながら経営者の楽観的な期待と過信によって経営者の投資の意思決定が企業価値を最大にする最適な投資の意思決定から乖離する可能性を明らかにした。 製品需要に関する不確実性とともに潜在的な新規参入企業による市場参入の脅威に直面した状況における独占的地位にある既存企業による生産規模の拡張に関する投資の意思決定とその投資の価値評価を分析する研究について、生産規模の拡張が潜在的参入企業による市場参入の意思決定に影響を及ぼす効果によってもたらせる戦略的価値によって構成されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題の研究目的は、オプション価格評価理論の動学的枠組みを応用し、現代企業の投資・財務戦略に関する意思決定の分析において考慮されるべきである二つの要素1. 競合企業の行動に対する戦略的考慮、2.経営と所有の分離に起因する経営者の私的インセンティブや心理バイアスを明示的に組み込んだ理論モデルを構築し、不確実性下における企業の投資・財務戦略の意思決定のメカニズムを明らかにするとともに、それらの意思決定が企業価値に及ぼす影響を分析することである。 それらの二つの要素について、潜在的な新規参入企業による市場参入の脅威に対する戦略的考慮と将来の投資価値に対する経営者の楽観的な期待と過信という心理バイアスに焦点を当て、それらを明示的に組み込んだ理論モデルをそれぞれ構築した。そして、それらの要素が企業投資と資金調達の意思決定に及ぼす影響を分析した。これらの研究については、その研究成果を学会および学術誌で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成24年度)は、前年度に設計した競合企業の行動に対する戦略的考慮と経営と所有の分離に起因する経営者の私的なインセンティブや機会主義的行動を明示的に組み込んだ投資・財務戦略の意思決定に関する理論モデルが、研究目的を十分に達成できるように適切に設計されているかどうかということを本研究課題申請者の研究協力者等へコメントを求めるなどして詳細に検討していくことから開始する。また、設計したモデルをコーポレートファイナンスや産業組織論の分野に深く関連する特定の事業・財務戦略の意思決定(たとえば、M&A・スピンオフ・子会社化・事業提携・製品差別化・参入抑止や市場独占を目的とした経営戦略など)について応用した発展研究へ拡張できる可能性ついても、本研究課題申請者の研究協力者等のコメントを受けるなどしていくことも検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会・研究会での報告・参加および研究協力者との研究の打ち合わせのための旅費、本研究の応用分野であるコーポレートファイナンスおよびガバナンス・産業組織論の書籍と研究資料とモデルの設計と分析に関連するゲーム論・確率論を中心とした数学の書籍と解析ソフトウェアに関連する書籍の収集、モデルの数値計算を実施するための解析ソフトウェアの購入、海外の学術誌への投稿を目的とした英文校正と論文投稿などの支出等に研究費を使用する計画である。
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Research Products
(2 results)