2012 Fiscal Year Research-status Report
地域貢献型ベンチャーの創出に影響を及ぼす、起業家による主観的要因の再検討
Project/Area Number |
23730359
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
松野 将宏 横浜市立大学, 総合科学部, 准教授 (00386666)
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Keywords | ベンチャー企業 |
Research Abstract |
本研究では、起業家が事業機会の認識において、どのように自らの意図や行為を正統化しているのかについて、主として制度的起業家における起業意図や行為に着眼して、事業機会の発見と認識のプロセスを検討する。 起業家が起業機会において認識する正統性は、認知的行為であると理解できる。起業家の正統性の認知は、起業家が埋め込まれている歴史的・社会的・文化的文脈の影響を受けて、起業という行為に独自の意味づけを行う。調査では、起業家がどのような認知的プロセスを経て、事業機会を発見し、自らの意図と行為を正統化しているのかについて検討する。その際に、既存の制度に対抗するために制度的プレッシャーに戦略的に対応したり、自らが埋め込まれている文脈において意図と行為を社会的に構成していくことにより、起業家は事業機会を認識し、認知的正統性を獲得していくのではないかと推察される。 以上を踏まえて、本研究では、起業家による主観的な正統性の認知に着眼し、制度的起業家による事業機会の認識は、起業家が埋め込まれている歴史的・社会的・文化的文脈に強く影響を受けてるという仮説を実証する。 本研究では、制度的アプローチと社会構成主義という分析フレームにより、起業家による事業機会の認識と、意図と行為の認知的正統性の獲得のプロセスを検討する。具体的には、制度的起業家(特に、社会的起業家)に着眼して、彼らの意図や行為について公表され、利用可能な資料を収集する。資料は、テキストマイニング技術により内容分析を行い、起業家が埋め込まれている文脈において意図と行為を読み取り、解釈、意味づけを行うことにより、どのようなプロセスで起業家は事業機会を認識し、認知的正統性を獲得しているのかを考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究における理論的検討では、分析フレームとして制度的アプローチ(特に、新制度派組織理論)と社会構成主義を検討してきた。その結果、本研究の成果として参照することができる、制度的起業家研究における社会的起業家の役割について言及している著書を出版することができた。結論として、制度的起業家は、既存の制度に対抗するために新しい制度そのものを創出したり、自らが埋め込まれている文脈において意図や行為を社会的に構成していることが分かった。 研究目的における具体的な方法として、現在は、制度的企業家に関する言説、意図や行為について公表され、利用できる資料データの収集を行ってきた。また、テキストマイニング技術により起業家の意図や行為について読み取り、意味づけ、解釈するという内容分析については分析中であり、具体的な成果として公表するには至っていない。この点は、今後の研究により推進し、起業家による事業機会に認識プロセスや認知的正統性の獲得プロセスについて考察していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで収集してきた資料データを分析し、起業家による認知的正統性の獲得に影響を及ぼす要因について検討していく。加えて、制度的起業家による事業機会の認識プロセスを考察し、社会的企業のように制度的変容や社会的影響を意図した起業行為について、どのように正統性を認知していくのかについて検討していく。 具体的には、利用できる資料データをテキストマイニング技術により解析し、内容分析を行う。内容分析はテキストマイニングに関するソフトウェア「SPSS Text Analytics for Surveys 4.0.1」等を使用し、制度的文脈に埋め込まれている起業家の意図や行為に関する、主観的な認知プロセスについて解析する。理論化においては、SPSSの共分散構造分析ソフト「Amos」を活用して、起業家の正統性の認知が事業機会の認識に及ぼす影響をモデル化することが考えられる。加えて、事業機会の認識に関するモデル化としては、テキストマイニング技術により起業家の意図や行為に影響を及ぼす技術的・制度的要因を可視化する技術を用いて内容分析を行うことも考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在の調査課題として、特に、起業家の意図や行為、事業機会の認識に及ぼす影響についてテキストマイニング技術を活用した内容分析を推進していくことを考えている。これまで、テキストマイニングに関するソフトウェア「SPSS Text Analytics for Surveys 4.0.1」を使用して内容分析をする際に、PCのスペックが十分でないために、解析に時間が掛かりすぎるといった支障を来すことがあった。今後の解析では、テキストマイニング技術を活用した起業家の意図や行為に影響を及ぼす技術的・制度的要因を可視化も検討していく考えであり、よりスペックの高いPCを必要とする可能性がある。したがって、内容分析と理論化に使用するソフトウェアの購入、および、高スペックのPCの購入に使用する計画がある。また、引きつづき、制度的企業家に関する言説、意図や行為について公表され、利用できる資料データの収集を行っていく。主として、新聞記事や雑誌記事の検索結果をデータベース化するため、全てを自動化することはできず、手作業で行う必要がある。そのため、研究協力者による資料収集、データベース作成、データのクリーニングといった作業が必要なるため、研究協力者の雇用のために使用する計画がある。加えて、起業家による事業機会の認識プロセスの実践として、学生による新規事業開発や新商品開発プロセスにおける経営学教育の効果を測定したいと考えている。よって、学生が主催する新商品開発コンペティションへ参加し、研究協力者との意見交換および成果の検証のために使用する計画がある。
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