2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730365
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大内 紀知 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (10583578)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 普及戦略 / 普及モデル / マルチエージェント / ネットワーク効果 |
Research Abstract |
本研究は、市場のグローバル化や製品のネットワーク化が進む中で、従来とは異なる製品・サービスの普及戦略が求められているとの認識に立ち、「製品・サービスの普及に対する最適投資戦略」の立案をねらいとする。3年計画の初年度である平成23年度は、1.学際的アプローチの基礎を構築するための基礎研究のレビュー・国際ワークショップ等による最先端研究のレビュー、2.マルチエージェントシミュレーション等を用いた普及モデルの開発、3.モデルの検証のためのデータ整備、4.モデルの検証、5.企業戦略への応用に注力した。その結果、次の研究成果を得た。(1)非接触型電子マネーを例に、製品特性・各社の戦略が普及プロセスに与える影響を、数理モデルを用いた実証分析により明らかにした。(2) ソーシャルネットワークサービス(SNS)の発展によって消費者の情報力が増大し、消費者行動が複雑化していることに着目し、映画市場を例に、消費者間のつながりを考慮した普及モデルを開発した。さらに、シミュレーションにより、映画のタイプ別に宣伝予算の効果的な時系列的配分を明らかにした。(3)インターネットショッピングのように、複数のユーザー・グループが取引きするためのルールやインフラ(プラットフォーム)を提供し利益を得るプラットフォーム・ビジネスについて、ネットワーク効果を考慮した普及モデルを構築した。その上で、各ユーザー・グループへの価格設定が、プラットフォーム運営者の利益に与える影響を明らかにした。(4)環境配慮型製品の製品・サービスの普及段階において、消費者の購入を促進させるには、製品の機能・性能以外の価値が重要な役割を果たすことを定量的に明らかにした。上記の研究成果は国内学会、国際学会で発表している。今後は、普及モデルの改良、分析対象の拡充、理論の統合化等を行い、学会での成果発表および国際学術誌への投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の平成23年度の実施計画である1.既存研究のレビュー、2.普及モデルの開発、3.モデルの検証のためのデータ整備、4.モデルの検証のそれぞれについて、以下の通りおおむね順調に進展している。1.既存研究のレビューについは、論文等のレビューに加え、学会、国際ワークショップへ参加し最先端研究の情報を入手することで、研究の基礎を構築することができた。2.普及モデルの開発については、ネットワークの外部性や価格設定などを考慮した普及モデルを開発し、マルチエージェントによるシミュレーションを行うなど順調に進展している。ただし、当初の計画では、普及モデルの開発において、考慮すべき要因の一つとして挙げていた普及に影響を与える各国固有の要因や国民性をモデルに組み込むことは今後の課題として残っている。3.モデルの検証のためのデータ整備については、電子マネー市場、映画市場、E-commerce市場、環境自動車市場をはじめ様々な市場のデータを整備することができた。4.普及モデルの検証についても順調に実施し、検証の結果をモデルにフィードバックしながら、モデルを改良している。また、これらの研究の結果を踏まえ、企業戦略への応用として、宣伝戦略における効果的な時系列的配分や、プラットフォーム・ビジネスにおける価格設定の影響などの分析に着手できた点は、計画以上の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、電子マネー市場、映画市場、プラットフォーム・ビジネス市場、環境自動車市場などを分析対象として普及プロセスを分析した。今後は分析対象を拡充して新たな知見を得るとともに、これまでの分析対象から得られた個別の知見の整理・統合に注力することで、製品特性が普及に与える影響を明らかにし、普及モデルの改良を進めていく。また、普及モデルの開発にあたっては、当初の計画にもあるように、各国固有の要因や国民性が普及に与える影響をモデルに組み込む予定である。そのために、これまで構築した研究者のネットワークを活用しながら、国際ワークショップ、国際学会に参加し、海外の研究者の知見を積極的に取り入れ、モデル化を推進する。また、モデルの検証に必要な国別のデータについては、研究代表者が別途進めている研究で整備したデータを有効活用する予定である。それにより、検証のためのデータ整備、モデルの検証を効率的に進めることを可能にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
モデルの開発のための海外研究機関との研究打ち合わせ、国際ワークショップへの参加に加え、国内学会・国際学会での研究発表を行うための「旅費」と、普及モデル検証のためのデータ・ソフトウェア等の「物品費」に研究費の多くを充てる。
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