2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730365
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大内 紀知 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (10583578)
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Keywords | 普及戦略 / 普及モデル / マルチエージェント / ネットワーク効果 |
Research Abstract |
3年計画の2年目(平成24年度)は、本研究の命題である「製品・サービスの普及に対する最適投資戦略」に対し、1年目に構築した普及モデル研究成果をベースに、1.普及モデルの継続的開発、2.シミュレーション分析、3.普及メカニズムの解明、4.企業戦略への応用に注力し、次の研究成果を得た。 (1)Social Networking Service(SNS)の発展に伴う消費者間ネットワークにおける情報流通が製品・サービスの普及に与える影響を考慮した普及モデルについて、映画市場を例にマルチエージェント・シミュレーションを用いて構築した。構築したモデルを用いたシミュレーションにより、SNSの発展が製品・サービスの普及に与える影響を明らかにした。さらに、普及を促進するための宣伝予算の効果的な時系列配分を提示した。 (2)2種類のユーザ・グループを共通のプラットフォームでつなぐビジネス(プラットフォーム・ビジネス)の代表例である電子商店街を対象に、買い手と売り手のサイド内ネットワーク効果とサイド間ネットワーク効果を考慮した普及モデルを、マルチエージェント・シミュレーションを用いて構築した。さらに、価格設定が普及に与える影響を分析し、売り手のサイド内ネットワーク効果がマイナスに作用する場合には、売り手の手数料を低価格に設定することが、電子商店街の運営企業の収益を高めることを示した。 (3)企業の学習能力、外部技術の活用能力、自社製品が外部市場に与える影響などを考慮した普及モデルについて、2製品からなる市場を例に、システム・ダイナミックスを用いて構築した。構築したモデルを用いたシミュレーションにより、外部市場を触発して成長させ、そこから生まれた技術を内生化する能力を高めることが企業の持続的高収益を達成するためには必要であることを示した。 上記の(1)~(3)の研究成果は国内学会、国際学会で発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実施計画に従い、1.普及モデルの継続的開発、2.シミュレーション分析、3.普及メカニズムの解明、4.企業戦略への応用に関して、以下の通りおおむね順調に進展している。 「1.普及モデルの継続的開発」については、前年から取り組んでいる(1)SNSの発展に伴う消費者間ネットワークにおける情報流通を考慮した普及モデルや(2)2種類のユーザ・グループを共通のプラットフォームでつなぐビジネスの普及モデルについて、実データを用いたモデルの検証を通じて改良を行い、より再現性の高いモデルを構築することができた。 普及モデルの改良が進んだことにより、「2.シミュレーション」「3.普及メカニズムの解明」も順調に進み、SNSの発展が普及に与える影響や、プラットフォーム・ビジネスにおいてサイド内ネットワークの大きさが普及に与える影響などを明らかにすることができた。さらに、広告宣伝費の時系列配分や価格設定の戦略などに関してシミュレーションにより得られた結果と、過去の事例から企業が取った戦略を比較することで、成功企業の要因を明らかにするなど「4.企業戦略への応用」に関しても、順調に進展することができた。 ただし、当初の計画では、普及モデルに各国固有の要因や国民性を考慮する計画であったが、その部分については、進捗が遅れている。しかし、既に各国固有の要因や国民性が製品・サービスの普及に与える影響については、OECD・G20各国のインターネットと携帯電話の普及率のデータを用いた実証分析を行っており、今後は、分析結果の考察を踏まえて、各国固有の要因や国民性を普及モデルに組み込む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、分析対象を拡充することにより新たな問題を発見し、これまで構築した普及モデルの更なる改良を行う。また、各国固有の要因や国民性が製品・サービスの普及に与える影響を明らかにし、それらを組み込んだ普及モデルの構築を行う。そのために、現在進めている各国固有の要因や国民性が製品・サービスの普及に与える影響に関する実証分析の結果について、これまで構築した研究者のネットワークを活用しながら海外の研究者から積極的に意見をもらい、分析結果の考察を進める。また、国際ワークショップ、国際学会に参加し、モデルの改良点について議論していく。 企業戦略への応用に関しては、企業へのインタビューの実施、学会、ワークショップでの議論を通して、現場の意見を取り入れながら推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
モデル改良のための海外研究機関との研究打ち合わせ、国際ワークショップへの参加、国内学会・国際学会での研究発表を行うための「旅費」と、モデルの検証、企業戦略への応用分析をデータ・ソフトウェア等の「物品費」に研究費の多くを充てる。
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